子供のころ、小林道夫フランス組曲全曲のレコードを何度も聴いた。ニコライエーワと同じくらい好きだった。日本の伴奏者の第一人者と言われるだけあって、ソロはとても録音が少ない。このCDでソロが聴けて、しばらくぶりでうれしかった。そしてフランス組曲がCD化されていないことをとても残念に思う。NHKFMで3夜連続のライブでブランデンブルク協奏曲全曲を当時の日本のトップクラスの演奏家でライブ演奏する企画をなつかしく思い出した。チェンバロと指揮はもちろんこの方で、5番のチェンバロのソロがとても素敵だった(トークもおもしろかった)。ソロや他の演奏がCDになってもいい演奏家だと思う。80年代とはまた違う彼の演奏をもっと聴きたい。この演奏を聴いて切実な思いを抱いた。
近代哲学の父と呼ばれているデカルトの思想の概要と価値について分かりやすく説明してくれている入門書です。
著者は、デカルトを「自ら創設した哲学を基礎にして諸科学を新たに構築した史上他には存在しない人物」であるだけではなく、「人間的生の価値を説いた人物」と紹介して、その思想が「科学と人間に関する現代的問題を考察する最良の題材」であると述べています。
本論は、デカルトの認識論と形而上学については『省察』に、自然学と宇宙論については『哲学の原理』に、人間論と道徳論については『情念論』に主に従って解説されていて、それらの思想の概要や価値や課題が大略は把握できます。
デカルトの生きた時代は日本で言えば江戸時代の始めに当たりますが、その当時ここまで「合理的」な思考をすることが出来、さらに「合理的な思考の限界」をも認識することが出来ていたというデカルトの精神を垣間見させて頂きました。
東映特撮作品の劇場版だけをピックアップ収録したBOXの第一巻。 一巻は、1966年モノクロ2作を含む古い作品群を収録していますが、 懐かしい作品4作をまとめて楽しめるのがお得な一枚です。 特に、はじめて観た『スパイキャッチャーJ3』がなかなか面白かった!
1.『スパイキャッチャーJ3 SOS 危機一発』1966年公開45分収録モノクロ 東映製作、大人向けスパイアクション特撮テレビドラマシリーズ、 「SOS危機一発」前・後編の編集版。 TULIPという対謀略組織のエージェント、人呼んでスパイキャッチャー たちの活躍を描く。 J3川津祐介主演、J2江原真二郎、J1日本支部長が丹波哲郎! 根岸明美、室田日出男ら共演! コルベットスティングレーの改造車(ホバリング可能!)を乗り回し、 サングラスに白いスーツ、タバコに、車載電話機、レーダー、 秘密兵器といったスパイのお約束をずらりと並べた楽しい作品。
カー・アクション部分は、「すべてミニチュア特撮」なのですが モノクロなので結構良くできて見えるから、余計に楽しい。 現在、東映が現存を確認しているのは本作劇場版と、テレビ3話分のみで、 他は紛失しているというから残念!
東映の「和製スパイアクション」は、丹波哲郎の「キイハンター」に つながり、その後の「Gメン'75」では丹波哲郎、川津祐介も出演します。
2.『宇宙特撮シリーズ キャプテンウルトラ』1967年公開 50分 カラー、フィルムの傷多し 「ウルトラマン」に続いたTBSウルトラシリーズ第3弾!(セブンは第4弾!) 東映版「キャプテンフューチャー」!
第2話「宇宙ステーション危機一髪」怪星ロケットギンダーあらわる および第5話「バンデル巨人あらわる!! 」バンデル巨人登場 の再編集、っていうか、ただ単に2つ続けて上映しただけ。 主題歌も2回流れる「東映まんがまつり」の一本。 (同時上映『黄金バット』『ひょっこりひょうたん島』『魔法使いサリー』!!)
カラーテレビ時代の「青くて明るい宇宙」が特長! 「ウルトラサイン」を出したのは実はウルトラマンより人間が先だった ことや(バットマンのバットサインみたいなもの)、 バンデル星人には手の中に手があることや、バンデル巨人の中には 機械室(!)があったり、見どころ満載。
キャプテンウルトラ・中田博久、キケロ星人ジョー・小林稔侍、 ムナトモ博士・伊沢一郎ら、といったやはり東映畑の俳優が出演。 ロボット・ハックの迷台詞、ロボのくせに「そう計算通りにはいかない」 とか、口癖「ほんにょごにょん」とか、ハックのロケット砲も披露。
3.『河童の三平 妖怪大作戦』1968年公開 24分 モノクロ 「ゆーらりゆーらりゆーららら」という主題歌が懐かしい! 「ゲゲゲの鬼太郎」の水木一郎の原作、「悪魔くん」と並ぶ、 妖怪テレビシリーズ。夏休みの再放送でよく観ました。
第7話「死神小僧」をそのまま劇場公開。 河原三平・金子吉延、甲羅の六兵衛・牧冬吉、 カン子・松井八知栄の3人による三平の母を探しながら、 妖怪退治を続ける旅を描く。 今回は、死神親子の物語で、砂かけお婆も出てきますが、 迷キャラクター潮健児が演じる「いたち男」は出ていないのが残念。 ナレーターは小林清志だったのか!
4.『柔道一直線』1970年公開 24分 カラー 第18話「勝て! 勝て! 勝て!」のブローアップ版で、東映まんがまつり の一編として『海底3万マイル』他と同時上映。
寝技の特訓に悩む一条直也・桜木健一はレスリング部員(片岡五郎)から 勝負を挑まれるが、一条は寝技を習うため、彼が住みレスリングの練習 をしている孤児院を訪れる。 「あの独特のオリジナルルールの柔道」の試合や「二段投げ」も登場! 孤児としてひねくれていた青年が、まっすぐな一条に出会い、戦い、 心を開くという感動作! 車周作・高松英郎、嵐先生・牧冬吉、高原ミキ・吉沢京子という 共演陣に会えるのも嬉しい!
予告編集は「三平」と「柔道一直線」のみ収録。
本書のポイントは2つ。
1.現代の自然科学の成功因をアリストテレス的自然観からデカルトの心身二元論的世界観への転換として捉えること 2.デカルトの心身二元論以来問題とされてきた「心の哲学」の基礎付けの問題を、他ならぬデカルト自身に立ち帰り解消すること
この2点である。前者は(単純化し過ぎだろうという批判はあれど)言い古されてきた話であるが、 後者は際立って斬新である。希代の哲学者達がこの問題故にデカルトを超克することを試みてきたのであるから、 とうの昔にこの問題がデカルト自身の「心身合一論」によって解決されていたという主張は、 たとえば私がwikiに書こうものなら即座に「独自研究」のレッテルを貼られるだろう。 これが遅れて来たデカルト擁護なのか、それとも真の考古学的発見なのかは、真摯な読者の判断に委ねられている。
ただこの本、確かにタイトルにも副題にも偽りナシなのだが、 タイトルに惹かれて手に取ってしまった人は、内容が「ゴツい」と感じること請け合いである。 というのも認知科学の成果ありきの後付けの一般向け哲学的論議ではなく、もろに哲学プロパーの人間が書いた哲学論考だからだ。 むしろこの本が対象としている読者は、最初に挙げたポイントからも明確なとおり デカルトの心身二元論が提示する哲学的問題系に興味のある人々である。この点は留意されたい。
また、多くのレビュアーによって見過ごされていることであるが、 デカルトが可能にした自然科学という特殊な営為の特徴を平易に論じている点も本書の素晴らしい特徴であろう。
内容の濃密さと議論の明晰さ、主張の説得力には感服である。星5つ。
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