ノーベル賞を受賞した数学者ジョン・ナッシュの伝記的映画。同名の原作本を映画化したものです。原作をかなり美化してナッシュを描いている箇所も目に付くのですが、映画としてはとてもよくできていると思います。精神分裂に苦しむ姿を描く映像は優れているし、なにしろナッシュのナイーブな面をこれでもかと好演したラッセル・クロウが素晴らしい。登場人物も少ないし、アクションがあるわけでもないし、話に大きな起伏があるわけでもないのに、グッと見る側を離さない映画の力を感じました。
Schizophrenia すなわち、現在いうところの「統合失調症」、以前の名称でいうところの「精神分裂病」に関する本。 分かりやすさでは既に定評のある "A Very Short Introduction" の一冊ですが、この書籍に関しても例外ではなく、割合分かりやすい英語で最後まで読み通すことが出来ます。 ただ、平易とはいえ、当然ながら解剖学的医学的ターミノロジーで構成されているので、hallucination, delusion, という典型的な精神病理学単語から、temporal lobe(側頭葉), cerebellum (小脳)など、大脳生理学的な単語が重要な意味をもってくる場合もありますので注意が必要です。
冒頭、精神分裂病の治療史から書き起こし、分裂病の概説、薬と精神分裂病、分裂病の病因論(いわゆる「遺伝か環境か」)、分裂病の徴候論ときて、最後に少し、分裂病の現代社会論(どのように対処すべきか、その仮説など)が170ページ余りで説かれます。小著でありながら目次と参考書籍の紹介が割に充実していてそれ自体は大変有難いのですが、当たり前なんですが参考書はどれも洋書なので、どれがどのくらいまで手に入るのか、あるいは図書館にどれくらい置いてあるのか、ということは今のところ確認しておりません。
さて、精神分裂病に関する書籍、特に一般書に関していえば、大きく分けて二種類の書き様があろうかと思います。
まず一つは、精神分裂病の認識論的分析、あるいは精神分裂病に対する解釈学。日本において出版される、精神病理学・精神分裂病に関する書籍のほとんどはこちらではないかと思われます。たとえば宮本忠雄の好著『精神分裂病の世界』、また『知覚の呪縛』をはじめとした渡辺哲夫の諸著作はこちら側の記述にあたります。 もう一つは、同病の治療史および治療法の解説。 この本は後者、つまり、精神病理学の臨床医学的概説書であり、「精神分裂病とはなにか」ということよりも、次のようなことをメインに記載されています。つまり、「精神分裂病はこのような発現をするが、臨床的に何をどうすれば大体どうなるか、そして病理学者が如何に治そうとしているか」という、些かプラグマティックな論述です。 治療史の部分に記載があるDSM-4をはじめとした「精神分裂病の診断シート」が詳細に記載され、あるいは臨床的薬学史とでもいうべきものに全体を通してフォーカスしているのも、やはり実用主義的なというか、現在精神科にておこなわれている医学について概説する、ということを第一義にした本のように見受けられました。
これはやむを得ないのかもしれませんが、個人的には、大脳生理学に直結するようなリニア・コーサルティ(直線的因果論)と、何でもかでも脳内物質に還元して物事を考える要素還元主義が昔から好きではない上、そもそも精神分裂病の「解釈学」が読みたくて購入したものですから、治療史の部分以外については、やや期待はずれのものでありました。
勿論、現在精神病理学にて大体何が行われているか、あるいは(臨床医学として)対症療法的にどのくらいまで事がわかっているか、ということを知りたい向きにおいては期待に応えてくれる概説書だと思われます。もっといえば日本にこのようなたぐいの薄い臨床精神医学の概説書がほとんどない(寡聞にして知らぬ)ので、その意味においては有用性はあるのではなかろうかと思います。 書籍自体の評価としては星4つも、個人的には欲しい記述がなかったので星3つということで評価します。
100人に1人の発症という意外に身近な心の病、統合失調症について、それを知らない人も具体的に理解できる。例えば芥川龍之介の患った注察妄想など。 何よりも病む者の側に立つ視点がこの著書にはある。つまり遺伝や性格だけではなく、それ以上に社会的な要因に照明が当てられる。近代化されていない社会との比較は説得力がある。逆に言えば、今日の社会や家族の側の受容体制こそ問題なのかもしれない。 フィルターをかけるのが苦手という認知的特徴は、病の早期発見に繋がるのだろうか。まだまだ解明されていないことは多々あるようだ。 この病の治療史の概略や治療薬についての言及がきちんとあり、特に患者を支える家族にとり役立つと感じられた。
私の息子は5年前,30代で統合失調症を発症しました。発症の2年前から仕事に出られなくなりました。 町医者(精神科)からの処方薬を服用していましたが,薬が合わなかったのか,本書の内容のように「狙われている,監視されている,電波で指令されている」などの迫害幻聴が増してきました。睡眠不足で朦朧となったまま深夜に家を飛び出し,行方不明となる事態となりました。 専門病院へ緊急入院させ,最初は隔離室(保護室=独房),次いで閉鎖病棟での入院治療を経て,外来通院治療となりました。 息子を独房へ入れた夜は,親として涙が流れて眠れませんでした。 それを期に統合失調症の本を読みました。多く本は専門家の立場からまとめられたもので価値があるものですが,本書は家族や患者の立場から,ポイントとなる事がわかりやすく網羅されていて,マンガとあなどれない本です。必要なことの総てがこの一冊にまとめられているので,手の届くところへ保存しておきたい本です。 願わくば,7年前に出版されていたら,息子が重症にならぬ前に適正な治療を受けさせることがでたと思います。 統合失調症は誰にでも起きる可能性のある病気なので,広く知って戴くために役立つ一冊と思います。
本予想できない展開、意味がわからない世界。当に天才だと思います。 セットや小物も細部まですごくよくできていて世界が作り上げられてます。 夢の中か現実なのか見てる方まで分からなくなってしまう、面白い。
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