刑法条文もカタカナから現代語になってかなりの時間がたった。外形的にはこの点だけ見ても本書は古い。 改訂者の手が入っているが、取り上げられるエピソードもずれたところがある。しかし、著者は、変わ らぬ人間の本性を見据えている。刑法とはそもそも赤裸々な人間の究極の姿を同じ人間が裁断するものだ。 かちかちで戦前のしっぽを隠しもったままの、あたかも統治者のごとく語る権威の刑法にあきたら、 これを勧める。外形に反し、視点は今も新しい。
社会人向けの法律入門書。日常生活で起こりうる事例を関係条文とイラスト付きで解説する趣向。著者の故佐賀潜氏は、元検察官で弁護士の傍ら推理小説家として活動していた。著者は「カッパ・ビジネス」から法律「入門」シリーズを多数発表しているが、とりわけ「不動産法」と「民法」がお勧め。私は、小学生のとき実家でこの2冊の旧版を発見した。試しに読んでみると、小学生でもよく分かり、貪るように2冊を読んだ。「不動産登記」という重要な制度があること、不動産は一旦人にお金で貸すと簡単には返してもらえないこと、不動産の上に持ち主とは別の人の「権利」が発生し得ること、現状を放っておくと「時効」という制度で他人の「権利」が発生し得ること、「地面師」の手口、自分の土地が未登記でも流木に印をつけて第三者に主張し得ること(明認)など。法律の世界を垣間見ることができた。私が法律に興味を持ち、法学部へ進学するきっかけとなった本である。
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