初見の印象はあまりよくかった。 内容に対して感情が整理できず、この映画に嫌悪感をもったことを覚えている。
だが、しばらく(数日)経つと自分の中で不思議な印象の変化を感じてきた。
そして再度観てみるとほとんど180度印象が変わっていた。(…DVDで繰り返し観る事ができるというのは贅沢なことだ) 非常に残酷な内容であるにもかかわらず、とてもファンタジックな美しい映画のように感じた…。
なぜだろう。私自身が男だからだろうか。 女性ならこの映画どう思うのだろう?。
主人公は『美少年』とクレジットされている。 別に美少年に見えない。 …ここはつっ込みどころかもしれないが、そのアンバランスさが寧ろこの映画に逆説的なリアリティを与えているようにさえ感じる。 この映画は元来ピンク映画なのだから男性視点中心に作られているだろう。ピンク映画の枠をこえて男性の生理的な汚物(?!)まで見せられたように(私には)感じられたから、初め嫌悪したのかもしれない…。 そしてそれを(私は男だから)受け入れ美しく(?)感じたのだろうか?。性の衝動を処理しきれないまま胎内回帰願望を体現するように丸くなる幼い主人公。どこかに共感してしまう。 これはどう解釈すべきだろう。
この作品は低予算で短期間に作られた映画だという。確かに荒っぽい印象はある。 だが確かにこの作品は重大なナニかを表現している。(それは何だといわれると判らないが…) 短期間(撮影自体は三日程度。追加撮影を含めても一週間かかっていない様子)でコレを作り上げたとは!!。 このとき製作スタッフの感性がいかに鋭かったかがわかる。
ソフトは監督インタビューや詳細なブックレット(唐十郎のインタビューを含む)など、内容が充実している。 この買い物は期待以上のものだった。
「性」と「暴力」、「政治」をテーマに、時代を疾走するスキャンダラスな映画監督若松孝二のBOX第4弾は、最も若松色が濃く出た、極めて刺激的な作品集だ。内田吐夢の、あの「飢餓海峡」を蹴飛ばし、ベルリン映画祭に日本代表として選ばれ、"たかがピンク映画ごときが"と、良識派、保守派の識者から国辱モノと蔑まれた「壁の中の秘事」、盟友足立正生との数多くの共同作の中でも、最もアバンギャルドで観念的なSM映画にして、平岡正明や松田政男、種村季弘らが絶賛し、一躍反体制の寵児と持ち上げられた「胎児が密漁する時」、そして、同じくアンダーグラウンドの旗手だった唐十郎を主演に迎え、インテリたちを嘲笑し、欲望と憎悪が渦巻く情念と怨念が噴出したパート・カラーの傑作「犯された白衣」と、今日では正直、観る事がへビィに感じてしまう3作だが、口当たりの良いウエルメイドなモノだけが映画ではない、あの喧騒とした60年代後半に、熱気と共に生まれ、一部の人々に激烈に支持された過激な代表作を再確認できる。
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