この「伝説のフォークライブシリーズ」は、VOL.1~VOL.3まで3枚発売されていますが、私は3枚とも買いました。いずれも2時間程度の内容で、しかも各アーティストの代表曲が1999年当時のライブで見れます。70年代のフォークが好きな方なら3枚とも「買い」だと思います。 このVOL.1ですが、高田渡編は、京都の磔々で収録されています。高田渡がメインの曲が10曲、いとうたかおがメインの曲が3曲、シバが2曲、村上律が1曲、中川イサトが2曲、中川五郎が2曲という構成です。 高田渡のパートは、映画「タカダワタル的」を思い出させてくれます。 ステージでのしゃべりも入っていますが、ちょっと聞き取りにくい感じです。 三上寛編は、東京でのライブで、一人でギター(アコースティックではない)を弾きながら、「夢は夜開く」や「パンティーストッキングのような空」など彼の代表曲5曲が収められています。 元々テレビ番組用のものですので、間にインタビューが入ったりしますが、そういう場合にありがちな、曲が途中で途切れることはなく完奏状態で収められています。その点でも好感が持てます。
日本が誇り、津軽が誇るフォーク・シンガー、三上寛さんの自伝。その青春時代から、近況にいたるまでの足跡を本人の言葉で語りつくしてくれている。
自分は三上寛さんのライブを何度か見たが、その歌を聴くたびに涙が出てきてたまらなくなる。あったかい、熱い涙が、ライブの何曲目かで必ず大量に流れ出してしまう。他のミュージシャンのライブを見てもそんなことは全くないのに。後から考えると、なぜ自分が泣いたのかもわからなかったのだが、この本を読むとなんとなく想像出来る気がする。
それは、歌に、音にこめている重さや熱さや冷たさと言った質の濃密さ、、他の人から受け取って聞いている人に手渡していく多くの念をこめた歌や音だったからではないかな、と思った。こう書いていてももどかしいが、言葉とはぴったりと重ならないもの、音とも密着しきれないものが三上さんの歌には詰まっていて、自分にとっては空位のままの父親であるかのように、津軽ではもうめったに会えない「はんつけにされても心優しくまっすぐで強いもつけ」のように、またはこの世では会えないはずの弥勒のように、ありえないほどの美しい世界を作り出してくれる。有り難い歌の世界。歴史上の人物のようだ。こんな人が今も生きているのが信じられないほどだ。 と言ってみても、三上寛さんの歌には程遠いし、この著書について何を書こうとここにこめられている言霊に釣り合う言葉を書ける自信がない。ライブの打ち上げでも、一言も声をかけられなかった。そばにいても、尊敬と緊張で気分が悪くなったほどだ。芸術に興味があるなら、三上寛さんの歌を聞いて、この本を読むべきだ。ライブ映像も動画投稿サイトにはいくつかアップされているし。好みが違ったとしても、日本で、日本語でこんな深みのある表現が出来ることを知ることは損がないと思う。この著書も、三上さんの肉声が生々しく聞こえるかのような濃密な一冊。
2000年に亡くなった田中小実昌、通称コミさんは『ポロポロ』で谷崎賞を受賞した小説家でしたが、一般にはテレビ番組に登場した印象からストリップ小屋の座付作家ぐらいにしか思われていなかったのではないでしょうか。 『濡れた海峡』の主人公は若き日のコミさんを彷彿とさせる歌手の三上寛が演じていて、まるっきり演技はしてはいませんが、便所にしゃがんでポロポロつぶやいている様子は、うらぶれたコミさんの小説の感じがよく出ています。女性たちは山口小夜子、桐谷夏子、小川惠の三人とも素晴らしく魅力的です。石橋蓮司の相手役を演じている桐谷夏子は、石橋の実際の奥さん、緑魔子をふっくらにしたような女性なのがなんだかオカシイ。 東北地方(岩手県あたり)の貧しい漁村や地方の田舎町を漂白する一種のロードムービーで、徹底的に金持ちは出てきません。70年代の一部のピンク映画にもあった「うらぶれ感」がいっぱいです。 キネマ旬報でも評価が高かった作品で、VHSもシネスコ・サイズなのはあり難いですが、ぜひDVD化して欲しいですね。 追記:2012年12月、とうとうDVDが発売になります。
本来なら文句無しに星5つですが、前半で拓ボンのセリフが消されてました。東映のやる事じゃ無いと思います。
諸般の事情で復刻されずいましたが遂に紙ジャケ仕様で発売ですね。 先ずは復刻に携わった方がたに敬意致します。 エコーバリバリでスタジオから響いてくる 流し風のギターと声は唄かはたまた叫びか怨念か。 プロツールス全盛録音の昨今事情では成し得ない、1970年代の息吹が伝わってくる。 佐伯俊男画伯作のジャケットも絶妙だ。 三上作品に限らずこの手のカタログは発売されても直ぐ廃盤になりますので御注意を。
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