平々凡々なる作品・・
僕は都合七度、これを読んだ。 つまらないと思った。 駄作だと決めた。
作家はかけないことをかけない。 かけることをかく。
・・この作品はある種の完璧である。 完璧。 木崎以外の誰がこれを書けよう?
僕はつまらないと思っていた。駄作だと決めていた。 しかし、六度目、七度目に読んだときには・・
・・アリスの悲しさは、恐らく、きっと、木崎の悲しさである。 僕はそれが悲しく、そして美しいと思ってしまう・・
木崎ひろすけの初連載作品(と思う)。 トーンを全く使わない作家は最近増えているけど、木崎ひろすけは別格、しわ等一つ一つ繊細に書き込まれた絵はとても美しい。 もう木崎ひろすけはこの世にいない、この本も途中で終わっている(掲載誌が休刊したため)けどこの作品の持つ圧倒的なパワーは人を満足させると思う。 まあ、だからこそ亡くなったのがさらにおしい所。
マンガ家を目指す、ちょっと世間知らずの少女のストーリー。 と書いてしまうとアリガチだけど、おっとりノンビリながらの彼女の純粋なひたむきさと、それにかかわる2人の大人のマンガ家の間のストーリーは読まなきゃわからない。 私も何故自分が今の趣味・仕事をしているのか、深く考えさせられた。 これが、作者特有の非常に丁寧な「絵」と、リアルな時間と空間を感じさせるテンポで、心に染み渡る。 今、何かを目指そうとしている人、目指すものに迷いがある人は是非読んでみてほしい。私もそういう時にこの本に出合えていたら……と思う。 未完であることが残念でならない。
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