このアルバムは日本で作成されたブルースライブのアルバムとしては、B.B.キングの初来日時のライブアルバムとローウェル・フルスン来日時のライブアルバムと並び、ほぼこれ以上ないものであって、国際的にも燦然と輝く内容なのに、なぜ廃盤のままなのか。 権利関係の問題が複雑ではあろうが、後世に残すべき貴重な音であり、内容も申し分なく、実際にこのライブを見た人間にとっては思いを永遠に封じ込め、見ることが出来なかった人間にはスリーコードでともすれば単調と見られるブルースの奥深さの指標ともなる。 米国ではジャケットが違い、曲の並びも若干変わってデルマークより発売されていた記憶があるが、それにしても入手が困難となっているのは残念。
1974年に初来日した折に、The Acesとの鉄壁のコンビネーションを見た人には、実は少し食い足りないかも知れない。しかし、このとき齢七十をこえるのである。しかも、グレッチのギターはさほど使っていなかっただろう事は明白で、ギルドの12弦ギターの方が遙かに響きが良く演奏を行っているのだ。
ライナーを書いている小出氏は、主催者がグレッチでの演奏を望んだこともある、という趣旨の事を書いているが、実際にはこれは大きなお世話だったかも知れない。
このライブを見ている筈なのだが、場所を記憶していなかった。なるほど、今は無き有楽町そごうの上にあった読売ホールだったのか。いや、ドラムのオディ・ペインを親爺と同じだなどと与太を飛ばしているお茶目なロックウッドの発言で会場で笑ってしまったのは覚えているのだが。
89歳でソロライブってすごくないですか?確かにテクニック的には若干若い頃の方がいけてるし、パワーも落ちている。しかし若い頃にはないアレンジのきいた、それでいてスタンダードなブルースを聞かしてくれる。ロックウッドに言わせりゃまだまだ進化し続けるブルースの過程にすぎない本ライブは、まさにロックウッド的ブルースであり、ロバートジョンスンと比べてどうとか、デルタがどうとか語るのは野暮ってもんです。古き良き時代のブルーズを知り尽くした生きるブルース達人の演奏、伝説ではなくリアルタイムで聞ける事、それだけでファンは幸せなのです。あちこちにちりばめられた素晴らしきブルースの伝統を勉強させていただくってなもんです。
|