ここに書かれている方々はとても海外のコミックに精通していると思われるので内容にかなり厳しめにかかれていると思います。 むしろ自分はでかでかと帯に記された「アイズナー賞受賞」と、それを受賞した作品を出版した編集部側の思惑を考えたりしました。 ジェラルド・ウェイの最初のコミックであるこの作品は、このクオリティはやはり新人とは思えない完成度を保っています。 まず「チームヒーローもの」、もはやチームヒーローすら陳腐であるこの業界でわざわざその関係性を網羅しながらお話を作っていくのはさぞ楽しかったろうなと 思います。変にひねくれていない、むしろ王道のヒーローものの展開を懐古とブラックジョークを混ぜたこの不可思議な曲調、 カートゥーンアニメばりのテンポのよさ、主流のヒーローものの雰囲気を壊さずに質を高めたことが受賞の遠因となったのかなと思います。 アートに関してですが、ヘルボーイっぽいなと思ったらそのまんまカラリングはヘルボーイの人でした。 キャラもそれぞれがよく立っていて、殺すのも惜しいキャラも色々いました。そいつらを平然と殺して行くのが、作る側の本気を感じました。 特にNo.5やポゴなんかは日本人受けしそうなくらい可愛いキャラでしたし。女性受けもしそうだなと。 日本で唯一刊行され続けているヘルボーイ似のアート、ポップなキャラデザで王道の分かりやすいストーリー、と、アメコミ読者の新規開拓にはうってつけだと思いました。
まず、観やすい映画ではない。少なくとも‘カンガセイロ’と‘ランピオン’という言葉がわからなければツラいかも、だ。(Bo-he-mianさんのレヴューを参照してください) 映画としてもリズムはよくはない。アクションでグッと盛り上がったかと思えば、長い独白(独演会?)のような会話が続き、また短いアクションが挟まる構成だ。正直にいって序盤は退屈した。そして所々で眠くなった。(実のところ、今回のソフト化が初見だったのだ) だが、いろいろと欠点は持っていても次第にそのテンションに魅せられたのも事実なのだ。体の芯を揺するようなエナジー。神話的で暴力的で土俗的な…強引な力。痺れた。そして、二回目以降のほうが面白かった事も書いておきたい。 低予算で第三世界の監督がまだ26歳の頃の作品。 それが…半世紀近くたった今でもこれだけのインパクトを保っている。凄いことだ。
ブラジルの荒地をタイトルバックにこの映画は始まる。 やせた土地。貧農の暮らし。何度も繰り返される人々の顔のアップ。顔、顔、顔…。ドキュメンタリー的な迫力。…本物の迫力が、画面いっぱいに広がる。主人公もまたそんな貧農(牛飼い)だ。
『マタドー〜マタドー〜カンガセーロ〜♪』 本作には‘アントニオ・ダス・モルテス’が出てくるのも見所だ。もちろんテーマソングも健在。でも、違いもある。今作の彼は容赦がないのだ。人々をあっさり虐殺してしまう。彼は白い悪魔なのだ。・・・なぜか、銃が玉切れしないのは同じだけど。(ちなみにビジュアルも本作のほうがチョッと精悍だ)
二人の狂信者も重要だ。 それはカルト集団の長・セバスチャン(黒い悪魔)と政府に抵抗するカンガセイロ(反政府ゲリラというか群盗というか?)のコリスコ大尉。 二人の狂気に貧しい主人公達(マヌエルとローザ)が、貧しさゆえ救いを求める物語だ。 『血を流さず、法に従って、正義は得られないのか!』(マヌエル) 『平和ってものは天国にしかないのだ』(コリスコ大尉) 狂信者は当然(?)絶望的な闘いをしかける。そして白い悪魔=アントニオが立ちはだかる。彼等は銃声と叫び声に囲まれてしまう。
結局、マヌエルとローザは救われない。逃げるしかない。逃げるしか道がない。絶望的なラストカット。だが…荒野は最後で海に切り替わる。海は(黒い悪魔のセバスチャンによれば)救い。救いの象徴。…彼らはたどり着けたのだろうか。(おそらくムリだろう) … そんな閉塞状況が当時のかの国だったのだろう。すくなくとも若きローシャはそう表現した。(と思えた) 『人々の分裂は、道を誤る』 そして、ローシャは、常に闘争的に…政治的に…映画と対峙していたのだろう…。 かの国で…。 ローシャはおそらく本作で本格的に闘いをはじめたのだ。 これは若さに溢れた熱いフィルム。そのエナジーに痺れるように観るのをお勧めしたい。
『平和ってものは天国にしかないのだ』 …それはローシャの実感なのかもしれない。
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