文章の密度が高く、実際の字数以上の字数があるように感じさせる。 決して難解なのではない。いずれもユーモアのこもった軽妙なものなのだ。しかし濃密である。 難しい言葉を使うところもある。 「戒飭《かいちょく》」(過ちを犯さぬよう戒める)、「加餐」(栄養をとって体を大切にする)、「三十年の一狐裘《いっこきゅう》」「豚肩《とんけん》は豆を掩《おお》わず」(いずれも、非常に倹約すること)など、見慣れぬ言い回しが出てきて、辞書を引かされた。 表記の上では、冒頭の「琥珀《こはく》」で「萬」を使っているのが目をひいた。 新潮文庫編集部による「表記について」には、「旧字体で書かれているものは、原則として新字体に改める」とあるのだが。 「萬」と「万」!は本来別の字で、「万」は《ぼく》と読むべき字であったので著者が厳密に区別していたものだろうか。 ほかに、「一一」「我我」「沸沸」というように、「々」を使わない表記をしているのも理由があってのことなのだろう。
まじめな文体とまじめな言葉でくだらないことを書く滑稽さ。 何気ない風景もぐっと読ませる描写力は百'關謳カならではのもの。 軽妙洒脱な文体で読み進めるのが楽しくなってくる。 特に気に入った記述は「気ちがいと神経衰弱とは違う。極度の近眼でも目くらではない。吃りと唖を一緒くたにしてはいかん」 である
『ツィゴイネルワイゼン』… 初見は20年以上前だろうか?。当時洋画ばかり観ていた私が意識して邦画を観た始めての映画だったように思う。その時のメディアはVHS。 筋はちっともわからないのに不思議なオーラの酔わされ、以来LD、DVD、とメディアを変えて楽しんできた。 (残念なことに銀幕では観たことないのだ…涙) それがとうとうブルーレイである…。感慨深い。 当然購入し、鑑賞。やはり三本とももの凄く楽しい。幸せである…。 わたしにとってこの映画は‘原点’とでもいえるもので、いまでも冷静に分析したりできない。…ひたすら好きである。 (もちろん『陽炎座』も『夢ニ』も同様) といったわけで、作品自体の評価は★10個でも足りない。
さて、 せっかくのブルーレイ。やはり画質の向上が気になるので早速手持ちの『デラックス版』三本と比較。 まず『ツィゴイネルワイゼン』『陽炎座』は画質向上がはっきりと感じられる。 服、表情、皮膚の質感等々、細部がかなり見えており違いははっきり。画面のガタツキや小さなゴミ等もかなり取り除かれ良い感じである。薄暗いシーンでは特に違いが明らかで、例えば『ツィゴイネルワイゼン』終盤に小稲が数回訪問するシーン(素晴らしいライティング・撮影・美術による素晴らしいシーン)などは『デラックス版』では暗い箇所がただつぶれた感じだったのが、本ディスクでは独得の空気感に満たされ幽玄なシーンとしての見所を増している。コレを観てしまうと『デラックス版』の画質には戻りにくい。 …また、若干色味も違う感じである。(これに関してはデラックス版のやや青が強い色味のほうが私は好みであるが) 『夢二』については色味に大きな変化はないが、やはり細部はよく見えている。 色味に関しては今回のHDリマスターの監修が故永塚一栄氏ではなく藤澤順一氏(『夢二』『カポネ大いに泣く』のカメラ)であることも影響しているかもしれない。(但し、氏は『ツィゴイネルワイゼン』『陽炎座』両作品にも永塚氏の撮影助手として関わっている) といったわけで、画質の改善と色味の変化は確認できたが、何しろ古い映画であるので劇的な変化とまではいかない。 (この変化はブルーレイによる改善なのかHDリマスターによる改善なのか正直よくわからない)
ソフトの仕様については、簡素そのもの。 封入物はポストカード三枚程度。しっかりとした造り・デザインの外箱はなかなか良好なのだが、各ソフトのジャケットデザインは(…基本的には悪くないのだが)正直に言って「また、この写真かぁ」といった感じだ。新しいデザインを採用して欲しかった。 映像特典も予告編と静止画ギャラリー程度。他の方が指摘されてるようにチョッと寂しい。 (『デラックス版』は特典が豊富だし裏話満載の製作荒戸源次郎によるコメンタリーが楽しい。画質の差はあっても手放せない) そんなわけで★を一つ減らしました。
といったわけで、商品としては若干詰めが甘いと思いますが、画質の改善等は明らかですし、さらに清順監督作初のブルーレイでもある訳でファンの方にはお勧めできるのではないでしょうか。
『ツィゴイネルワイゼン』(ドイツ語:Zigeunerweisen )作品20は、 スペイン生まれのヴァイオリニストであるサラサーテが作曲、 1878年に完成した管弦楽伴奏付きのヴァイオリン曲である。 非常に派手で劇的なヴァイオリン曲として知られる。 題名は「ジプシー(ロマ)の旋律」という意味である」
この『ツィゴイネルワイゼン』をモチーフとした映画、 何を描きたかったのか僕にはわからないが、 最後まで見せる力があることだけは分かる。
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