著者の野田弘志さんは有名な画家です。 リアルということについて真剣に思索と実践を繰り返してきたことのまとめとしての魅力が本書にはうかがえます。 絵画の歴史からダビンチやフェルメールを題材にし、実際の製作過程を一人の女性画家とのインタビューなどを踏まえ、リアリズム絵画に求められる視点を平易に検証再現していきます。 絵に限らず美術方面へ進まれる方には是非読んでおいて欲しい一冊だと思います。
また文中では写真というものが記号過ぎる点についても幾度か触れられていますが、写真を撮る方にもお勧めです。写真は絵画ではありませんから、文言に敏感になるよりも、リアリズムや存在というものに向き合う姿勢に学ぶべきでしょう。ひとつ付け加えるなら、写真は「いまここにあること」を実践するものですから、何ら卑屈になるようなことはありません。どうぞ一読ください。
この絵画作品集、ずっと大切にしたい。
なぜなら、本物だから。
本気の本物の人が描いた作品だから。
これからもたびたび作品集を開いて描写からうかぶ野十郎さんという光景と会話したいと思う。
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しかし多くの画家はなぜもっと存命中に光が当たらないのだろう。
もちろん野十郎さんなら、脚光という名のシラジラしい光から来る邪魔なものどもを疎ましく思ったかも知れないけど、、、。
人間が築いた理屈など吹き飛ぶのが素晴らしい作品の価値だと思う。
ただ言葉を失い、ただ見る、ということでもある。
う〜ん、しかし、ホントいい作品集だ。
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PS:
作品集だけではなく、野十郎さんの生きザマを紹介した本もある。
なんだか野十郎さんの「唯一わが道」という人生の選択は、単純大衆迎合な現在の我々に多くの方向性や人生の選択の可能性を教えてくれている。
勇気をもらった。
感謝である。
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