「可能性はほとんど無限ですよ」という日本語は、状態を言いあらわす言葉をふたつ使って、漠然とした状態がひとつ作り出されているにすぎないという。これを英語になおすには、「可能性」という漠然たる一般化をやめ、当事者のひとりであるあなたの想像力に問題をすべてあずけてあるという、英語的な発想へもっていく必要がある。 どの例文も日常なにげなく使っているようなものばかりだが、あらためてこうして解説されてみると、日本語らしさとはいったい何なのか、また英語的な文章が何をめざしているのか、いやでも考えざるをえない。この本は「英語ではこう言う」というサンプル集ではなく、「英語で言うとはこういうこと」なんだ、と納得するための本といっていい。 日本語の能力が問われるとはどういうことか。それを知るには、片岡義男が例文の日本語を解釈するその鋭いメスさばきをみればいい。「もっとも実感的な言いかたというものが、個別にひとつひとつ存在しているのが、日本語の大きな特徴のひとつだ」。これなどカスタマ・レビューを書いている人には、思い当たることがあるのではないだろうか。当人の実感ばかりがあふれて、何ら本質的なことをいっていない文章(自戒です)にいらいらするのは、私ばかりではないと思う。
この映画、主題歌(南佳孝の同名曲)、原作すべてに当時の自分のあこがれた世界の心象風景
の原点がある。夕暮れの第三京浜を上着をはためかせてスーパーホーク(HONDAの400です)
で疾走する古尾谷雅人が印象的。
南佳孝の主題歌が印象に残る。大人っぽく洒落た歌詞、彼の若干しつこい歌唱がここでは
心地いい。以来時々CDを聴いてはいい気分になる。少し気障な男の世界がある。
ただ映画は片岡作品の原作と他作品がミックスされており、忠実な再現ではない。もっとも
初期片岡作品は後の洗練された都会的なイメージのものと異なり、とても演歌的な世界だったり、
泥臭いものが多いので、ある程度作品世界は再現されている。
何といっても浅野温子。本当にハッとするほど魅力的。眼に非常な力があった。
そして古尾谷雅人のすねたような表情の数々。この方は、この頃この作品が一番光っている
のではないかと思ってしまう。ぶっきらぼうでなげやりで、青春時代のいらだちというか
うっとおしさ加減が、たぶん演技以上に自然に溢れている。
山崎努、原田芳雄、室田日出男ら大物も出ているが、室田は今観ると本当に迫力がある。
思えば80年代初頭の作品、この後怒涛のバブル時代を迎える。時代も自分も全てがこれから
先のまだ見ぬ世界に、輝く思いを馳せていたあこがれの記憶が映画と共に思い出される。
角川が残した幾多の映画作品の中で、異色の作品と言っていいのではないか。
この本が新装版として売られることになったとしたら、どこに置いて売るべきだろう?
と考えた。つまり、どんな人にオススメしたいか? ということであり、もっと言えば
この本の読後感には、どんな人なら満足するだろうか? ということだ。
新幹線に乗り込む前の人が立ち寄る駅の売店だろうか? だったら、重すぎたり考えさせ
られる本は適さない。この本なら、到着後の心理に影響も出ず、いいかもしれない。
あるいは心の友といえる一冊を探す人が行くような、フロアごとに違うジャンルの書籍を
揃える大型書店だろうか? もちろん、心の一冊にする人は少なからずいるはずだ、本の
趣味は千差万別なのだし。コンビニの雑誌陳列棚の手前にある、占い本の隣あたりは
どうだろう? ちょうど松下幸之助の人生訓の隣あたりか。読みやすさから言えば本作は
流し読みが許される内容であり、観たいテレビ番組まで持て余した一時間で読み切れる。
読む人を選ばないかわりに、読後感に手ごたえはない。いや、何が起こるのだろう? と
期待させられ続けた挙句いきなり終わる、と言ったほうがいいかもしれない。
しかし、描き出したい世界観はとてもはっきりしている。それは他人から見たら理解でき
ない意地やこだわりを持って生きている、若者の世界である。本作を読んだ人が、意味が
ない、何が言いたかったのかわからない、という感想を持つのは、ある意味で当然のこと
なのだ。この本はきっとそれでいいのだ。
誰でもが満足する映画ではないかもしれないですね。 私の場合、昔からバイクが好きで、片岡義男も好きだったので 充分楽しめました。 自分の青春時代にオーバーラップさせてみていた感じです。
原田貴和子は20歳頃の出演でしょうか? 温泉の裸がきれいでしたね。 大林宣彦の撮り方がうまいのか、セピアっぽい画面で いやらしくなく、絵画のようなイメージでした。
筆者が日常を通じて気がついた日本語と英語の相違点に関するエッセイ。表層的な単語・文法からその深いところにある文化的背景まで筆は及ぶ。大胆な結論を示すわけではなく、語学・言語学書というには躊躇を覚えるが、英語「主体とアクション」、日本語は世界を「状態」ととらえるなど、首肯すべき主張が示されている。とりあえずはどこから読んでも味わい深い事例を読んでいただきたい。
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