身近に感じる(といっても、自分が捕まるか否かではなく(笑))、 面白くて使える本でした。 「結婚・離婚」など、身近なテーマに見られる法律の問題等も知りたい、 読んでみたいと思いました。
この本の長所
1、一部とはいえ、思慮を深めた終身刑囚が終身刑をどう考えているか、絶望的な状況の中でどう今後の人生を積極的に生きているか、終身刑が残酷であるというホンネ、などが明らかになっており、終身刑や人生を考えるヒントが満載なところ。
2、アメリカの刑務所の様子が垣間見えるところ(教育プログラムの充実、刑務所の外で仕事をする終身刑囚、など)
この本の短所
二、三を除いて、終身刑囚がどんな犯罪を起こしたかが明らかでないところ。
読者にも感情があるので、犯罪事実をもう少し詳しく知った上で(第一級(謀殺)、第二級(故殺)だけでは抽象的過ぎる)その感情に向き合って終身刑を考えたほうが有益だと思うから。名前は仮名でもいいから、概要ぐらいは書いて欲しかった。
結論
短所は結構重要だと思うので、星を1つ減らして、星4つ。しかし、いろいろなことを考察できる有益な本なので、ぜひご一読を。
何の気なしに購入した本でしたが、非常に面白かったです。殺人と死刑そして刑というドラマティックな事象に対してはどうしても即時的な反応が出てきてしまいます。しかしこの作品はこのようなドラマティックな出来事に対しての多面的な接近を見事に果たしています。もともとは、仮釈放なしの終身刑という政治的な動きへの反対という非常に時事的な動機に基づいて書かれた作品のようですが、本書の射程と論理はその動機の時限性を超えて普遍的なものとなっています。統計を利用しての日本の安全神話崩壊という通説への論駁で本書は始まります。しかし話はそこで留まることなく、終身刑、死刑そして刑務所の実態へと冷静に議論は進められます。ここで議論のベースとなるのは人間にとって時間のもつ意味とかすかながらも可能性の維持が人間の生存への動機に与える影響です。この文脈の中で普段知られることのない刑務官の職務にも、縁の下の力持ちとしての文化的な宿命としての存在にスペースが与えられます。「被害者の視点」は深い論点を呈示しながらも、犯した罪の本質的な不可逆性への認識で締めくくられます。第7章は、刑を通した見事な日本社会論になっており、短いスペースながらも、日本の犯罪統制の歴史的なユニークさがその見事な成功と、一面では民主主義(個人主義)とは決して相容れないことのない日本社会の厳しさ(ページ183)が見事に指摘されます。追加で日本の社会における国家陰謀論の不成立性までもが、内輪話のようにコメントされますが、これはもう少しスペースがあった方が面白かったのかもしれませんね。そしてここでも取り上げられるのがマスメディアのどうしようもない幼稚さとその社会への害毒としての存在です。
個人的には大学での講義で受講可能な法律学、犯罪学、などを今の中学生世代から端的に社会の法律を教えるべきである、若くして犯罪を犯す輩は、無教養、無知、無学という常識の欠如がその要因でもある、モラル欠如時代と言われて久しい現代人必読の書
|