この手のセットものはぼやけた映像と最悪の音質というトホホなことがままあるわけですが、いい意味で期待を裏切ってくれました。音質は最高、ジャズメンはモノクロ画面に躍動しています。 買ってすぐにウッディハーマン、次にアニタ、さらにアートをデジタルスピーカーで拝見(聴)しました。いずれも素晴らしく「これは良い買物をした」と思います。ほとんど1960年代のヨーロッパでのライブ映像です。米国製なのに米国ライブが皆無なのは不思議ですが、自宅がライブハウスになった感じです。大満足!
ニューヨークの「ヴィレッジゲイト」でのライヴ盤。1962年8月13、15日録音。録音ディレクターはヴァル・バレンティン、プロヂューサーはクリード・テーラー。VERVE原盤。 御大コールマン・ホーキンスのテナーを囲んで,5曲目の「Bean and The Boy's」(ビーンはホーキンスの愛称)の曲名通り、当時は若かった、ピアノのトミー・フラナガン,ベースのメジャー・ホリイ、ドラムスのエディ・ロックというカルテット演奏。 ここで演奏される音楽は1拍ごとにスイングしなくて良い,1小節ごとというか,曲全体に身を委ねてしまえる音楽だと思います。当時で35年を超えるキャリア,ビバップ以前から名を挙げたビーンが,気鋭のロリンズに勝るとも劣らぬフレーズ。ボーイングと一緒にホリーが唸れば,ドルフィーよろしくテナーで嘶いてしまう「ジェリコの戦い」が愛らしくて,この演奏に「ケチ」を付ける野暮はいないと思います。当時57歳のリーダー、「フレキシビリティがあって落ち着いていて、ちょいとお茶目で・・・おじさんのあるべき姿」と「無い物強請り」をしたくなるわたしですが、余談はともかく,すばらしい演奏を聴かせてくれたミュージシャンに乾杯。
今日テナー・サックス抜きにジャズシーンを語ることは不可能であるが、そのパイオニアこそコールマン・ホーキンスであることは誰もが認めるところであろう。その後、チュー・ベリー、ハーシャル・エヴァンス、ベン・ウエブスター、イリノイ・ジャケーなどの名手がホーキンスの後を追って輩出し、この楽器がジャズの花形となったわけだが、ホーキンスの圧倒的な実力、影響力はレスター・ヤングが登場するまで独り舞台といってもいいほどであった。ドイツのジャズ評論家ヨアヒム・E・ベーレントによれば、ホーキンスは絵画でいえばバロックの巨匠、ルーベンスに例えられ、レスター・ヤングはセザンヌに当たる(こちらの表現はマーシャル・スターンズの例え)とのことだ。確かにホーキンスは、ヴォリュームのある音色、細やかな表現力、力強い説得力などまさにルーベンスが一時代を作った圧倒的なスタイルと影響力を持っていた。本アルバムで聞かれるボディ・アンド・ソウル等に代表される男性的で、豊かなソノリティ、劇的でメロディックな構成は、まさにルーベンスさながらキング・オブ・テナーの醍醐味を感じさせてくれる。そして、ホーキンスのさらに凄いところは、モダンエイジに入ってからも、バッパーたちと共演し、一向に古くならなかった漸進性にもうかがえる。 レスター・ヤングという、一方のモダニストの存在がありながらも、ホーキンスのテナーは輝きを失うことなく、現在にも生き続けているといえよう。その意味でも、スイング期からビ・バップ期に収録された本作は、ホーキンスのエッセンスを知る格好のドキュメントであると同時に、ジャズの歴史を一人のテナー・サックス奏者が鮮やかに伝える重要なアーカイブである。
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