最初に、平等院鳳凰堂についての五つの謎が提示され ます。この謎解きが結構面白くて読む者を飽きさせません。 (著者の意図するところは、2/16『週間読書人』に記述され ています。)もっとも、最後の九品阿弥陀仏をめぐる論述ま で来ると、さすがに疲れ果てるのも事実ではあるのですが・ ・・。 エピローグに記された「浄土教中心史観(家永三郎、井 上光貞)をこえて」という果敢なメッセージや建築史や美 術史を全体史から捉え直すトータルな視点の強調には、 深く共感できるところがありました。 本書の元の論文は、専門書や専門誌に収録されていた もので、めったに読むことはできなかったはずです。レベ ルの高い研究が一般向けに編述されて、このような形で 刊行されたことは大変良かったと思います。
フジミの寺院建築シリーズでは、大物クラス。以下、制作時気づいた点、注意すれば、 まこと、11世紀の、貴族層が夢に描いた、極楽浄土の建築がデスクやリビングに姿を現すでしょう。
1 パーツが多い、まづ、中央基壇、左右廊、大きく3つのパーツ群にランナーごと切り分け 整理する。
2 ランナーにパーツ番号、記号はない。パーツの裏に記号、または番号があるので確認していく。
3 3つのどれからでも制作していける。
4 ふつうインストの順からは、中央基壇から始めるでしょう、が、基壇の内部は、ご本尊と台座が金メッキで あるだけです。壁、天井、床はなんにもありませんー創建当初、きらびやかな装飾があったと現在は判明してるし、 扉が可動(この可動はちゃんと動きます)なので、ちらとのぞいた時のワクワクをつくりたいひとは、 内部をつくりこむといいですね。 いろんな画像を縮小コピーして、張り込み、クリアー塗りすればいいです。
5 基壇の2層最上部の屋根は3分割で、合わせはわるいです。 仮組をよくして、屋根のそりなど、修整しつつ慎重に接着します。私は瞬着を併用しました。
6 細かい匂蘭などのパーツはバリがあります(金型お疲れ?)、ナイフ、針ヤスリで、ていねいにかたちを出します。
7 すべての基礎床は、上をつくってしまい接着すると、塗装しにくいので、つくりながら塗装するか、 最初にやっておきます。
8 建築はみんなそうですが、垂直、水平をつねに確認しつつ、組みます。
9 前後しますが、白いパーツは白で塗装しないと透けます。私はサーフェイサーで下塗りをしました。
10 本物は、いまー2013年ー改修工事中で、往年を再現するそうです。 箱の写真のような、積年のウエザリング、リアルな 仕上げか、創建時を思わせる、柱が赤く、 どこも荘厳な浄土風かは、好みですね。 11 中央基壇の最上部の、鳳凰2羽は、金メッキで 極めて小さいパーツ。1羽3パーツ、飛ばないよう、ナイフで 切り、接着部をナイフでちょこっと削り、羽根をもっていき、流し込み接着剤をちょんとつけますと、 つくれます。 12 ごくごく小さいパーツは、ピンセットでつままずに(必ず飛んで行方不明になりますー笑ー)、ナイフの先にピッと つきさし、目的部へもっていくのが、うまくいきます。
では、世界でもまれなる左右対称が美しい至上の名建築をお楽しみください。 私は、これでNゲージのレイアウトにするので、次は池ー水面ー岩ー樹木をつくり、レールを敷きます。 いつできるのでしょうか?(笑)
西村公朝さんが阿弥陀様の目の位置から実際に周囲を見て、壁板の絵画の仏様が大小に描き分けられている意味を発見したというくだりに、鳳凰堂の空間創作の見方が広がった。阿弥陀様を直接見ているが、掲載写真のように多角的にじっくりと見ることはできていなかった。小川光三さんの鳳凰堂撮影失敗談や撮影最適時の割り出し解説に、撮影の苦労が推し量られる。だけど、一般参観では見られない瞬間を体感できることはすばらしくてうらやましい。伽藍復元図にある小御所に起居し、冒頭見開きの池に映えた浮き上がる夢幻の鳳凰堂に対面すれば、正に浄土世界に生きながら迎え入れられている自分に感涙したんじゃなかろうか....「雅やかな阿弥陀如来像」(西川杏太郎)からは平安期の極楽浄土へのあこがれと阿弥陀仏信仰の広がりが理解でき、定朝作丈六阿弥陀如来座像他の鑑賞ポイントが参考になる。「寄木造の技法と工程」(山崎隆之)の一文は素人にはとっても分りやすい。木村恭道さんの沿革史から平等院の変遷の数奇さに興味が深まる。
平等院鳳凰堂建立当時の彩色をCGで再現…実に見応えがある。 実際我々が現存する往時の建築物を一見した所で、今では 枯れてしまったその色合いから時間経過の長大さを感じる のが関の山なのだが、その感覚をこの一冊は楽々と吹き飛ばしてしまう。 この色彩こそは、往時の人々が望んだ浄土の姿なのだろう。
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