「やぶはらけんこう」ではない。タイトルは「やぶはらけんぎょう」。主役は古田新太。普段はあんなオッサンなのに、舞台上ではエラくかっこいい。そして役者全員が素晴らしい。なぜか劇中歌の歌詞がやたらにエロい。内容を大雑把に言えば、古田新太演じる杉の市が生まれてから死ぬまで。
たしかに、淡々とした会話が続くばかりで、大きな出来事が起こるわけでも、激しい感情が描かれるわけでもありません。 でも、微妙にくいちがう心と心が、会話の間から浮かび上がってきて、どんな人間関係のなかにも必ず存在する、人間同士は結局は分かり合うことはできないのだ、という事実をつきつけられます。根本的に、人間は孤独なのであって、それを糊塗することなく、誠実に描く作品として、とても上質なものだと思います。
「つまらなかった」というレビューもありますが、以前、山本昌代の小説に読みふけり、そのレベルの高さに確信していたので、自分を信じて買ってよかったです。 ある程度の読者としてのレベルを要求する作家ですが、もっと評価されるべき小説家です。
表題作は私にとってはなんだかよく分からなかったのですが、最初に収録されていた「逆髪」が印象的でした。盲目ゆえに山に捨てられた蝉丸は、狂気ゆえに山野をさまよう身となった姉逆髪に出会います。お互いにみじめな境遇に陥った二人。逆髪は蝉丸を理不尽に責めることで救われようとし、蝉丸はそんな逆髪に対してただ詫び続けることに救いを見出す。会話がうまい。退屈しませんでした。救いの無い哀しい話なのですが、その哀感が美しい短編です。
三島賞受賞作。
難病で下半身を動かせない鱈子さんと、細々と書きものを
している姉の可李子と、定年後ウォーキングを趣味として
いる父の明氏と、メニエル病の持病を持つ母親の弥生さんの
4人家族の日常を淡々と描く。
明氏の癌が見つかり入院することで家族に暗雲が立ち込め、
鱈子さんの不吉な夢で終わるが、それすらも淡々と描かれ
ている不思議な作品。
名前の「さん」の使われ方からすると、さんの付かない
可李子が作者本人と重なっているところのある作品なの
だろうと思う。
個人的に読後感はスッキリという感じではない。
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