邦題「狼たちの午後」は原題に忠実に「犬どもの~」とした方が良かったのに。その方がこの負け犬たちの悪あがきが伝わるでしょうに。アル・パチーノの活きの良い名演が堪能できますが、相棒の危ない神経質男・サルを演じる故・ジョン・カザールの名演がこの作品のキモとなっている。何と言うんでしたっけ? ハイジャック犯と人質達が奇妙な連帯感を持ってしまう心理現象-それが本作ではうまく描かれています。実際の事件がモデルだけにその辺りリアルです。主人公がヤジ馬達に向かって「アテッカ! アテッカ!」と煽り立て、シュプレヒコールが巻き起こるシーンがありますが、これはアッテカ刑務所の暴動事件で、官権の行き過ぎた鎮圧により多くの犠牲が出た実際の事件に由来している。つまり「お前ら権力はまた俺たちをブチ殺したいんだろう!?」と訴えている訳です。ヤジ馬たちが共感するのも何ともアメリカ的。同様に突然の非日常にうかれ高揚する心理を見事に演じる人質役のバイプレイヤーたち、リアルだけにその懸命さが何か可笑しい交渉役の刑事、ラストをしめる刑事役のランス・ヘンリクセンの冷徹な演技も見物。主人公の汗が滲んだシャツ、他のレビュアーが指摘しているが、まさに舌をだらりと出してあえいでいる様な、熱い暑い映画です。
のどかそうな(!?)表紙と邦題から、今度はどこかの南部令嬢と熱いボディガードの物語かなぁと思っていたら、ヒロインのマギーは書店を経営している自立した女性だし、舞台はアメリカ国内なのに、まるでアクション映画を観ているようなシーンもあって、今までのシリーズとちょっと違うなぁと思いながら、一気に読んでしまいました。ヒーローのイーガン・キャシディも、孤独なんだけどウルフとはまた違った個性で、作者のビバリー・バートンはきちんと書き分けてると思います。ヒーローとヒロインの関係も素敵でしたが、何よりヒーローが息子と心を通わせるシーンがとても素敵でした。 今後の活躍を期待できる他のボディガード達が出て来るのも、このシリーズの魅力のひとつ♪
恋人の性転換手術費用をかせぐため、強盗に入り立てこもることになった男とその相棒。おかしくもないから笑えない、緊迫というよりは切実、絶望的結末の予想、それでもアル・パチーノの熱演ぶりにはぐいぐい引っ張られました。はじめは、強盗二人はどこから見ても「ゴッド・ファーザー」のコルレオーネ家の次男フレドと三男マイケル(アル・パチーノとジョン・カザール)にしか見えない・・・話題性あるけど、なんというか残念というか面白いというか変な感じ、ゴッド・ファーザーと時期が近いだけにイメージが先にきてしまって兄弟でこんなチンピラになっちまって・・・と。が!しかし、また改めて見てみると、そうでもない!ストーリーに夢中!アル・パチーノのソニがカリスマ的パフォーマンスと意外な人間性で野次馬の一般市民どころか人質の銀行員まで味方につけてしまう、一見かっこいいようで所詮あわれなワンマンショー。そして、ここまでに至る家庭事情やいきさつなんかがわかってくるとますます悲しい。いつしか私も協力的銀行員の一人に・・・。映画「ソード・フィッシュ」でジョン・トラボルタのセリフにこの「狼たちの午後」の話題がありました。これには意味があるので、両方観るとおもしろいでしょう。
やっぱりあの物語がフルボイスで聞けるのはいいよね〜
多分、年老いたパチーノを知っている人が増えて、この映画を見たことがある人が少なくなっていることだと思う。今では大スター「アル・パチーノ」で声もだみ声になっちゃって貫禄もついて・・・という姿をイメージしてしまうが、この「狼たちの午後」のパチーノは若いしすごい、まさしく彼の独演会である。2時間を1人で演じてしまっている。とはいえもう1人影の主役とも言えるサルことジョン・カザールがいてこの名作は成り立っている。最後の一瞬は結果を知っていても2人とも逃がしてやれよと思ってしまう。アウトローが支持を得る下地があった1970年代ならではの映画(事実でもある)かなと思う。なんともいえないうだるような夏の気だるさがうまく表現されている(本当は秋に撮った映画らしい)。
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