ジョー・R・ランズデール「凶兆の空」 西部開拓時代を舞台に銃をふるって魔と戦う牧師メルセル・シリーズの本邦初紹介作品。荒廃した町の荒涼感や人物の持つ猥雑感、それにアクションと云うより暴力感は、この作者ならでは。 ロン・シフレツト「ミイラ捜索」 アーカムの探偵ウエイド・カーニーの軽妙なオカルトハードボイルド・シリーズ。日本語のタイトルで、ほぼ内容は見当が着くが、そういう事態になった原因は現代的。 ウィリアム・ミークル「慈悲の尼僧」 新カーナッキものの一本。元々のシリーズでもカーナッキは命がけの行動をとる事があったが、ここまで危かった事は無いだろう。正直、事件に関わるきっかけと云い、探偵役と云うより単なる主人公の様な・・・ ロバート・E・ハワード「墓所の怪事件」 ハワードの死後発見され70年代に発表された作品の一つ。ハワードならではの緊迫感が良い。そもそもハワードの作品てコナンなども含めて、その多くがハードボイルドだった気がする。 朝松健「鰓のある町」 いよいよ舞台はインスマウスへ・・・ それにしても一回分の連載、もう少しボリューム増やしてくれないものだろうか。 間瀬純子「オーロラの海の満ち塩」 美しくグロテスクなイメージが良い。クトゥルー神話アンソロジーに入れても充分通用しそうな作品。 ラリー・ニーヴン「最後のネクロノミコン」 SF界の御大に依る抱腹絶倒のクトゥルー・ショートショート。 北原尚彦「怪奇探偵シャーロック・ホームズ」 ホームズものにも怪奇な事件は結構ある・・・と云う話。 芦辺拓「探偵たちは怪奇な夢を見る」 かつて探偵小説には怪奇も含まれていたと云う話で、特に冒頭のジュヴナイルに゜関する話では懐かしいタイトルもあり、書かれている事に一々頷いてしまった。 立原透耶「中華圏の秘密組織と妖怪ハンターたち」 このコラムを読む度に想ってしまう。中国圏の作品を翻訳してくれ・・・と。 朱鷺田祐介「クトゥルフ神話とゲームの周辺」 新宿のクトゥルー・ナイト3や阿佐ヶ谷のラヴクラフト聖誕祭のレポートや、クトゥルー関連の今後の出版予定、新発売のカードゲームなど。 マット・カーペンター「クトゥルー・インフォメーション」 今回は児童向けクトゥルーもの。もっとも、書いているご本人は、これは児童の為ではなくマニアの為のものと云っているが、確かにそうだろう。元ネタを知っているファンでないと、この面白さは判らないだろう。
忙しいイラストレーターを多数拘束してTRPGセッションをやらせてイラスト満載なリプレイにしてしまおう、という無茶ながら人気の高いRole&Roll誌の名物企画。あらゆるシステムで実施されているが、2回、3回とセッションが続いて単行本化までされるのは非常に珍しい。
今回はTRPG初体験者も混じっているとのことで、ゲヘナ監修者でもある著者の解説も豊富でゲヘナ完全初心者入門書としての体裁も完璧。本来のダークアラビアンファンタジーも、『ミラージュオーシャン・ログブック』等の路線変更したライトな海洋冒険物も、両方の雰囲気を残しているのも好感度。
何よりプレーヤーさんたちが素晴らしい。普通の商業リプレイのようにセッション外でキャラ立てを摺り合わせる時間はほとんど絶無だろうに、5人のPCいずれも見事に深みのあるキャラクター造形がなされている。絵を描く人たちは魂も入れるということか、お見事。
残念なのはゲヘナの次の展開が全く白紙のこと。この本からゲヘナを知る人も多くなるだろうから、これだけで埋もれさせるには惜しい。
サイバーパンク特集。 ●ローレル・ハルバニイ「エレクトリック・アイ」 特集作品その1。電子技術が今よりも社会に根付いた近未来を舞台に、ストーカーの一人 称で語られるクライム・ホラー。 ●ブライアン・M・シモンズ「切断された男」 特集作品その2。クトゥルー神話。ラヴクラフトの古典SF「闇にささやく者」の続編でホラーと云うより怪奇ハードボイルド。 ミスカトニック大学のウィルマース教授の身辺に現れる何者かの正体と、行方不明の前任者の行方を探る探偵が主人公。ケイオシアムの”コール・オブ・クトゥルー・フィクション”の一冊としてウィリアム・ジョーンズが編集した”アーカム・テイルズ”に収録された作品だが、同シリーズから作品が取られたのは初めてだろう。正直、本作がサイバーパンク扱いだったので驚いた。と云うのは、「闇に囁く者」の忠実な続編で付け加えられている要素はハードボイルドな探偵ものの要素だけなので、本作がサイバーパンクだと云う事は、取りも直さず「闇に囁く者」にサイバーパンクの要素があったと云う事になるからだ。もっともそれも有り得る話ではある。「闇に囁く者」はSF黎明期の作品で、サイバーパンクは実質的には原点回帰でしかないからだ。実はサイバーパンクはジャンルではない。かつてのSF本来がそうであった様に現代科学や技術の延長上でストーリーを語ったもので、シュールリアリズム同様にムーヴメントの一種に過ぎない。ギヴスンがサイバーパンクの始祖の様に云われているが、実際はシュールリアリズムのアンドレ・ブルトンの役割をブルース・スターリングが担って宣言を行った結果、興ったものに過ぎない。だから電脳技術、生体改造等の今日的なアイデアの原点の一つである古典作品の続編ならば、確かにサイバーパンクにも成り得るのだろう。 ●グリン・バーラス「快楽空間」 特集作品その3。近未来を舞台にした電脳犯罪ものの非ホラー作品。 ●エリザベス・ベア&サラ・モネット「ブージャム」 特集作品その4。クトゥルー神話。非ホラーの怪奇スペースオペラ。 人類が宇宙に進出し、宇宙を航行出来る生物ブージャムを宇宙船として使用している宇宙海賊の物語。本作でも「切断された男」同様ミ=ゴと、彼等の脳を取り出して保管する技術が登場する。それにしてもブージャムが可愛い。ブージャムを掘り下げた作品が他にあれば読んでみたい・・・と、ここで希望を出しておく。
結局、サイバーパンクはダーク・ファンタジーに成り得てもホラーには成り得ない・・・と云う事か。 ●アンジェラ・スラッター「柩職人の娘」 ピカレスクロマンの趣もある、百合感覚がみずみずしいダーク・ファンタジー。 町で唯一の柩職人だった父の跡を継いだ一人娘の一人称形式で、死者の蘇りを恐れる人々はどうやら死者が生き返らない様に柩に封じ込めて欲しがるらしい。幽霊なのかヒロインの妄想なのか、死んだ父がやたらとヒロインの前に現れるもののヒロインにしか見聞き出来ない所にユーモアが漂う。 この人の作品の更なる翻訳も期待したい。 ●ロバート・ブロック「夢の窓」 クトゥルー神話。少女時代、何かに呼ばれる夢を見て何かに会っていた記憶があるものの、主治医からは夢遊病と診断されていたヒロインは、彼女が表に出るのを防ぐ為に塞がれていた窓を、親の死後成人して家を相続した後、窓を塞いでいた板を外したヒロインは再び夢を見る様になり・・・典型的なクトゥルー神話作品。 ブロックのインタビューも掲載されていて良い。 ●小松左京「海の視線」 日本SF作家クラブ所属作家から作品を選ぶ”センス・オブ・ホラー”の第一回。 客船を舞台にSFとオカルトを融合させた作品。但しSFとしては中々スケールが大きいもののホラー風味は今一つ。作者にはもっと本格的なホラーもあるのだが、SFの要素を持った作品となると意外に無かったのだろう。 ●石神茉莉「PLAY OF COLOR」 ”玩具堂”ものの一作でラヴクラフトの名作のオマージュを展開している。 ●朝松健「The Faceless City #5」 う〜ん、面白いのだが短くて物足りない。もっと一回分を長くして欲しい。 ●森瀬繚「クトゥルー・ミーツ・アメリカンコミックス 前編」 前フリとマーヴェルについて書かれている。只、シュマ=ゴラスはハワードのキング・カルもので言及されている「シュマ=ゴラスの鉄綴本」が元ネタだろう。後編はDCのムナガラーが紹介されるかな。 ●植草昌実「ホラー作家・石上三登志」 石上さんが創作もされていたとは知らなかった。もう少し長生きされていたら、本誌にも新作を発表されていたかも知れない。残念な事だ・・・
さて、次号はゾンビ特集・・・これも楽しみだ。
バイオハザード小説大賞で銀賞をとった作品ですこちらの方がウィルスに関することアンブレラのことが細かく書いてあると思いますページ数もトゥザリバリティーよりも多く絵も作者の書き下ろし?見たいで手間がかかってると思います!全部文章だけという本が嫌いな人はオススメですよ!これは2作とも買う価値あると思います!!!
待っていました。まず、そう口から言葉が出ました。 RPGマガジンで不定期連載だった作品がついにまとめて読める。 私にとっては作品のの全貌すら隠されていました。 なぞかけのようなセリフだけでなく、 絶妙に組み合いバランスをとって、 エッセンスとして随所にちりばめてあるクトゥルフ神話は 作品中に神秘の息遣いを与えています。 背景にはさまざまな設定がちりばめられています。 そう、この作品は他のクトゥルフ作品等を読むことで 何度読んでも新しい発見があると思います。 クトゥルフ入門にいかがですか?
|