大江健三郎の定義集で邦題「音楽と社会」のオリジナルとして紹介されていました。 まず翻訳本を読んで、その中でわかりにくいところをオリジナルで確認するというやりかたで、両方を読みました。一見解決不可能の問題に取組むバレンボイムとサイードが真摯にやりとりするのがとても新鮮でした。生き方を質す良書だと思います。
サイードはオリエンタリズムを書いた人ということは知っていたが著作を読んだことがない。なんか尖鋭的な人というイメージだけ持っていた。クラッシック音楽も少し聴くがバレンボイムのことは知らなかった。朝日新聞にバレンボイムのインタビュー記事があり興味が湧いた。この本ではサイードは少し図式的でステレオタイプな印象を受ける。バレンボイムは音楽の物理的、現象的な側面や演奏という行為に立脚しているので説得力があり示唆に富んでいる。
バレンボイムは、ベートーヴェンのピアノ協奏曲全集を録音しており、このDVDにはベートーヴェンの第3番の協奏曲を演奏しておりました。風格ある演奏、音色はいかにもベートーヴェンでした。DVDの最初の部分に観客・オーケストラのメンバーが「ハッピバースデー」を歌う場面があり、バレンボイムは驚いた表情が印象的でした。(今風のドッキリカメラの様でした)
ウイーンフィルのニューイヤー・コンサートでは名演とされる、カルロス・クライバー盤に次ぐ出来栄えです。メリハリがあるのに哀愁が漂う、素晴らしい演奏です。画像も音質も高いレベルですが、残念なのはコマ割りで、風景や踊りが多すぎることが只ひとつの欠点です。
買って損はありません。お奨めの一枚です。
専門的なことはまったく分かりませんが、軽やかな演奏は、聴いていて疲れません。私は、BGのように流して聴いています。値段も安かったのでよかったです。
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