実に素晴らしい内省的ドキュメンタリーで面白すぎる。 どんな小説家もかなわない「文学」と言えるだろう。 哲学史がドラマであるように彼の思想の遍歴はドラマだ。
しかし彼は皮相な、とばかりは言えないかもしれないのだが、反アメリカニズムの方へ傾く心情を隠さない。 彼は保守主義を持ち上げているが、その保守する(べき)内実は「想像の共同体」としての「近代日本国民」では ないのかと、思われてならない。
この本は60年安保「闘争」そのものをを取り上げている訳ではない。 彼はその後は日米安保「容認」になり今は日本の核保有まで考えていると思われる。 その「遍歴」の軌跡が知りたい。
今の「アラブ・イスラムの春」を見てみると、60年安保があれだけの大規模な違法行為(国会突入!)を伴いながら一発の銃弾も放たれず、死者も一人だけであった事の「特異さ」に誰か気づくべきだ。
戦前も実は「特異」だった。清水幾太郎が書いていたが、治安維持法でも朝鮮での3.1事件でさえ死刑の判決はなかったそうだ。 警察取り調べ段階での拷問やそれによる虐待死はあったとしても。
少なくも、司法の独立があり、裁判を政治的な見せしめにするような事はなかった、ということだ。 それさえ無いのがかってのソ連であり今の中国だ。
「センチメンタル・グラフティ」の続編といわれているがそんなことはほとんど感じさせない。いい意味でも悪い意味でもだ。多数のキャラクターが登場するためキャラクターのシナリオやCGには格差がけっこうある。ギャルゲーを始めて間もない人間にはオススメはできない。とにもかくにも「センチ」の世界が好きな人や大倉先生のシナリオ好きにはたまらないかもしれない。個人的には綾崎三姉妹がオススメかと。
爽やかな中にも絶妙のバランスで、口どけのよいノスタルジーがキラリと組み込まれている絶品「センチメンタル・ジャーニー」。メロディと言葉で世界観を表現するという才能に恵まれすぎた堀込氏ならではの一曲といえます。コード展開は穏当ではありますが、その他、音の「トッピング」に一癖もふた癖も。その淡々とした幸福感に、田中星治さんの懐かしの名曲「ビューティフル・サンデー」を思い出しました。このアーティストには珍しくエコーのきいたボーカルで秋のヘビーローテーション・チューンになること必至です。アルバムも待ち遠しい馬の骨! 兄の高樹氏もソロ始動するようでそちらも見逃せませんね。 ただ一つ気になることがあるとすれば、このマキシの二曲目に収録されている「Red Light, Blue Light, Yellow Light」のリミックス。シンバルズの矢野博康氏のリミックスらしいのですが、はっきり言ってぜんぜん面白くないリミックスです。言ってしまうと、ドラムンベースのリズムを若干変え、速度を早くしただけのものです。オリジナルのイイトコロを根こそぎにするディスコ・ミックス。これは違うと思いました。素人じゃないんだから、矢野さんはこれでお金をもらってはいけないと思います。 ただ「センチメンタル・ジャーニー」だけでも後悔しないです。心地よい幸福感に酔いしれましょう。
あの天下の奇書『トリストラム・シャンディ』の著者が書いたのだから、こんな題名でも、おとなしやかな紀行文であるはずがない。フランス国内、行く先々で、下女やら人妻やらにちょっかいを出して行く滑稽猥褻譚の趣がある。『風流チョイ悪親爺紀行』とでも訳したらいいのではなかろうか。
エッセイ、ショートストーリーを交互に交えながら、「旅」そのものというより、「日常」と「旅」の間にある、「記憶」や「感情」や「叙情」といった要素を辿り、女性的な「旅」への憧れを描いている。
単なる紀行文ではなく、「日常」と「旅」の「合間」を描いている点がユニークで、そこから「友人」や「恋人」など、日常に接する人や物事との微妙な「合間」も描かれていて、静かに共感出来る。
読み終わると「旅」に出たくなると同時に、「日常」も愛おしく感じる。そんな本だった。
アニャンさんのカバーイラストと沢山の挿し絵も抒情的で素敵。
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