NHK朝の連続テレビ小説、第一作「娘と私」(1961年4月3日)から47作「おんなは度胸」(1992年)まで のオープニング曲すべてを、オリジナル・サントラで収録した画期的なCD。
その昔、出かけ間際のせわしい朝食をかきこんで、ばたばた出かける時間に毎朝時計代わりに、 流れていた番組たち。
あるときは、バイト先の工場の社員食堂で、またあるときは出張先の客先の休憩室で、 毎日、決まりきったように映されていた、NHKの12時のお昼のニュース、昼のバラエティ、 12:45から朝ドラの再放送。 その終了と共にお昼休みが終わりました・・・。 常に、国民のほとんど皆が当たり前のように見ていた、生活の一部だったNHKの朝ドラも、 生活の多様化とともに視聴率も落ちてきているようです。
その曲を早速、実際に聴いてみると、想像以上に覚えている曲が少なかったことに驚きました。 もっとすぐに分かる曲ばかりだろうと思ってましたが、きっと、本当によく見ていたのは、 ごく一時期だけだったのかもしれません。
それでも、作曲者は有名な方ばかりです。 ざっとあげても、三枝成章、池辺晋一郎、大野雄二、羽田健太郎、冬木透、坂田晃一、小川寛興、 山本直純・・・さすがNHKです。
渥美清演ずる勉吉は弟の学にコ−ルガール指南をするだけではありません。自分もコールガールのひろみ=笑子(沖山秀子)とふざけ合ったり、抱き合ったり、性的な冗談を言いあったりします。そのテンポも活気も見事。寅さんとは違う、おそらく浅草時代の彼の魅力がよく出ています。寅さんの博が働く工場のような働き場所の工員・河原崎健三と、四ツ星電機の組立工・倍賞美津子の恋の経緯よりも、母親役の清川虹子の貫禄が素晴らしい森崎東監督の傑作です。
バイタリティ溢れる人物の描写が秀逸な森崎東監督のデビュー作。 森崎氏は初期、山田洋次監督の脚本を担当することが多く、「喜劇 女は度胸」と初期山田作品を見ると、森崎氏が大きく関与していたと推測される。いわば、二人三脚、二人の出発点は似たようなところにあったのかも知れない。それは、「男はつらいよ」のごく初期の頃まで続くが、山田氏が彼なりの「寅さん」像を確立したころ、二人の作風は離れていったのではないかと思う。
山田監督が庶民の生活を哀感、同情を持って描き、家族の絆によりどころを求め、ハッピーエンドに未来を託すのに対し、森崎監督は同じ庶民でも、虐げられてもへこたれないバイタリティを描き、その不屈な部分によりどころを求め、家族も未来−これから−に向かって突き進む。
「女は度胸」は、そんな森崎監督の個性が十分に生きている傑作。歯切れの良いテンポ、展開のリズム感は初期山田喜劇より上を行くと思う。登場する人間たちもバイタリティに溢れる。渥美清の兄も「山田寅さん」とはまた一風違った雰囲気を見せる。しかし、やはり女達のたくましさ、度胸が印象に残る。結構気が強い倍賞美津子、「コールガールだって人間だ」と言い切る沖山秀子、そして最も度胸があるのが母親の清川虹子。 ある意味、山田監督が描かない(描けない)部分を森崎監督は持っているのではないかと思う。
清川虹子によれば、彼女と渥美清はスケジュールの都合で全然顔を合わせず、家族のシーンも別々に撮影されたという。そんなことをまったく気づかせないカット割りと編集の巧さ。 森崎東はもう一人の天才だったのだと思う。
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