芥川賞候補作品だったことをレビューを見て知ったが 別にこれは芥川賞とらなくてよかったと思う。 そもそもあの賞は最近、何だこれは?という問いかけじみたものが多いし 受賞者に若い人が話が多いのも特徴的だけれど(話題性? 当てはまっているようで、なんか違う。なんとなくだけれど、 舞城は、こういう賞をとるような作家ではない気がする。 この人の話しは、一応文章としては最後に「?」をつける、問いかけ型だけど こちら側の思考能力を突破してるところがある上に、その問いかけには8割くらい舞城の答えができあがっていて 読者が考える余地がかなり少ない。 だけれど舞城の作る世界は堅牢にして柔軟。みっちりしているクセに外見スカスカに見える。軽い文体に読んで見てダマサレター と思いつつ楽しめる。 そんな魅力。舞城の世界に入り込みたい人が読む話だから 大衆向けの名前の大きい賞は似合わないと思う。というか、つりあわない。 だけれどこの本、愛をくどいくらいうたっているタイトルに負けず劣らず。 愛ってなんだ?と思った時、読んで見ると面白いと思う。
書店でこのインパクトあるタイトルに惹かれて手にとってみたら、 冒頭からの、その歯に衣着せない 「イマドキの女子高生」語り口に引き込まれてしまい、 さっそく購入して持ち帰り、その日のうちに読みきってしまいました。
多くの方が既に書かれているように、その独特の文体と語り口によって スピード感に溢れた物語になっていると思います。 読み進めていくにつれ、現実と非現実が交わる不可思議なその世界に、 主人公のアイコ同様に読んでる側も、あれよあれよという間に 巻き込まれ、翻弄されました。
ただ、話として面白いかというと、個人的にはどうかと思います。 現実世界で起こる事件とアイコの中にある非現実世界との関係という設定も、 何だかその登場が唐突というか、正直取って付けたもののように思える。 そして何より、最終的にアイコが自身の語りで全てを説明し、 ひとりで納得したような状態で終わってしまうのが腑に落ちません。 導入の掴みから前半にかけての展開がその先を期待させるものだっただけに、 何ともすっきりしない読後感を覚えてしまいました。
10年以上ぶりにがつんと来た本。 ある種の人は心臓をわし掴みにされるような「切なさ」が最大の特徴。 よく言われている、暴力も、文体のスピード感も、ミステリ仕立ても、福井弁も、全て「愛」を、「切なさ」を語るための道具に見える。 (とはいえ、切っても切り離せないところが舞城なんだが) 舞城は、愛を、暴力で、文体で、ミステリで、福井弁で、語る。
とはいえ、途中の暴力描写はとても痛かったし、万人には進められないけど、私には大事な本になりました。
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