本作では、30年代内戦直後のスペインを舞台に、フランコ軍により家族・仲間を失った中年の芸人ホルヘ、エンリケが、やはり戦争で天涯孤独となった少年ミゲルを、本当の息子のように慈しみ、芸を仕込んでいくという、ハートフルなストーリーと、フランコ軍に対する復讐を諦めないホルヘが、フランコ側の内応者と組んで、その暗殺を企てるという、極めてシリアスなストーリーが二重奏のように呼応、連奏されていく。 たしかに、スペインの風景は明るく美しい、しかし、本作の全編を覆い尽くす息苦しいまでの鈍い抒情もまた、フラメンコの国スペインを訪れる時に抱く奇妙だが普遍的な感覚である。それは、実に36年に及んだフランコ独裁の影であるのか、あるいは、ピレネーを超えればそこはアフリカという地勢的、文化的背景によるものなのか、それを識別することは難しい。 スペイン内戦を描いた作品として私の頭に浮かぶのは、「誰が為に鐘は鳴る」あるいは「ロルカー暗殺の丘ー」である。無論、ヒロイズムに満ちた前者よりも、後者の方がスペイン内戦の本質をより表していることは疑いがない。しかし、同じ本質に迫るに当たって、「ロルカ」が正に政治劇一本槍であるのに対し、本作「ペーパーバード」がヒューマンドラマを絡めたことは、観客を問題の所在へと引き込んで行くことにおいてより秀逸であったと言えよう。そして、年老いてアルゼンチンから帰国したミゲルが勲章を授けられ、おどけ、話し、そして歌う、そのラストシークエンスは、観る者を一瞬思想家たらしめる含蓄に富む。 ただ、丁度夕刻の闘牛場が過半で明暗に分かたれるように、スペインは私にとって、依然、矛盾と謎に満ちている。 統領フランコと軍部、ファランヘ党に対する今日の評価は、本作中にも出てくるように「ファシスト」として断罪されるのが常である。個人的には、フランコのスペインは、ヒトラーのドイツ、ムソリーニのイタリアと同列に扱うほどの強い思想性を持たない、いわば開発独裁に近い権威主義的政治の一形態と位置づけるのが穏当に思える。フランコが、第2次大戦で枢軸側に加わることを拒絶し、大戦後は、その地政学的重要性を武器に対米接近を果たし、さらには後継者に旧王家ブルボン家よりファン・カルロス1世を迎え一定の社会的安定をもたらすに至る政治手腕は、やはり、プロのそれであったと言わざるを得ないだろう。 無論、それは、彼の行った36年間の圧政と恐怖政治に何らの弁明を与えるものではないが、フランコという奇妙な独裁者の等身大を描く映画が、第2のフランコを生まないためにも必要な気がする。 いずれにせよ、本作の放つ暗き抒情は、私たちを太陽の国スペインの影の部分へと静かに誘い、何らかの感慨をもたらさずにはいない。スペインに何かしら興味のある人には是非観てもらいたい一作である。
シュルレアリスムなんだけど意外に
すいすい読めてしまうとはいえそれ
なりのテンションを要求されるのは
確かであって文章自体のテンション
もあいまってやはりすいすいと読め
てしまうのが驚き驚きであってそう
なので読んでみましょうこういうの
もありなのですよしかも読後は楽し
め感強いです。
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