浅田次郎の『シェエラザード』のドラマ化。阿波丸事件をモチーフとして現在と過去で繰り広げられる壮大な物語である。
アジア・太平洋戦争の末期、すでに日本が制海権も制空権も失っていた頃、日本は連合国の要請を受けて1隻の客船を南方占領地域へ向かわせることになる。それが連合国の捕虜への救援物資を積載した弥勒丸であった。弥勒丸には安導権が与えられ、連合国から航海の安全を約束された船だったのである。しかし、弥勒丸はアメリカ潜水艦の雷撃を受けて多くの人々とともに海底へと葬り去られてしまう。その真相に現在と過去から迫るストーリー展開は、素晴らしいものがあった。
とりわけ、弥勒丸のCGはともかく、軍人と船員の葛藤もよく描けており、船舶の徴傭に内包された問題点も密かに垣間見ることができる。また現在では仲村トオルと石田ゆり子の演技が光っており、過去では小澤征悦と長谷川京子の演技が光っていた。そしてリムスキー・コルサコフの「シェエラザード」の音楽が哀愁を誘い、物語を一層引き立てている。
しかし、反町隆史の演技に頭を抱えてしまうのは私だけだろうか。天下の大本営参謀が、この体たらくでは、まさに参謀肩章が泣いている。なぜ歴史モノの映画やドラマに反町隆史を起用するのだろう。私には、武将や軍人には全く向いていないとしか思えない。GTOが精々であると思うのだが……。
ちなみにロジャー・ディングマン著、川村孝治訳『阿波丸撃沈―太平洋戦争と日米関係』(成山堂書店、2000年)も参照されることをオススメする。
映画版では、主に斉藤との関係を描くことで新撰組隊士=武士としての
吉村を、そして大野の回想を通すことで家族を愛する吉村の姿を描いている。
約900ページに及ぶ原作を短い映画の中になんとかまとめたのはさすが
というべきであり、映画だけ見ても十分感動できる。
しかしながら、その映画版であっても原作の奥深さと伏線の多彩さには
及ばないように思う。特に、原作での台詞を詰め込むあまり、映画版での
吉村の語りが冗長的になってしまったのは残念だ。さらに原作での
エピローグに当たる部分は丸ごとカットされているため、話の結末が
狭義なものになってしまった。
原作がなければ満点をつけるのだが、以上の理由から星四つとした。
ちなみに、作品中の南部訛り=盛岡弁は岩手県出身の私が聞いても違和感のない
自然なものになっている。実際には、現在、作中のような方言の単語が話されることは
ほとんどないのだが、イントネーションはそっくりである。
昔の新宿など、世相を見れたり、今も活躍する脇の方々の演技も最高の作品だと思います。 ものすごく哀しい映画なんですが、反面、人間って捨てたもんじゃないな、と思わせる映画だと思います。 10年程前に一度観たのですが、タイトルも判らず半ば探すのを諦めてました。 先日、ふとしたことから中井貴一さんの出演から検索したところ、運良くヒット。購入出来ました。 もともとビデオ(しかもレンタルアップ品)ですから、画質は期待していませんでしたが、充分観賞出来て満足でした。
昨年、TVや書評などで注目されていた本だ。占守島(シュムシュ)でのロシアとの戦いにむけて、それぞれの兵とその家族がどのような状況だったのかが丁寧に描かれている。 あの時代の空気や人々の感性が敗戦を意識させる情勢の中で、切なく悲しく迫ってくる。45歳の夫を送り出す妻のやるせなさ、父を慕う学童疎開中の小学生、母親を戦災で亡くした少女。応召されないものの会社に残り同僚の無事を祈る上司や同僚、果ては動員計画を策定する大本営の士官やその通知を届ける役場の職員まで、それぞれの持ち場で、出口の見えない戦争に翻弄される個人の心情が切々と迫ってくる。 天皇の神格化に対する筆者の洞察などは、まさしくそれが真相などではないかと納得してしまうほど、説得力がある。常々、後世の人が、先の戦争を無謀な侵略戦争だったと一刀両断にする言質を耳にすることも多いが、その時代にあっては、そうせざるを得ない状況であったということも、しっかり認識しておくことが重要だと思う。徒に、当時の指導者を糾弾したり、または正当化したりせず、温故知新の心持で国際社会の中で一定の存在感と豊かさを実感できる日本にしていく責務が今の私たちにあることを改めて感じさせてくれた本だ。
浅田次郎の短編小説を鈴井監督により映像化
鳥取を舞台に幼い頃に父を亡くし、何かがスッキリせずモヤモヤとした日常を送る主人公ですが、ある事をきっかけに家を飛び出して…
鈴井さんや、オフィスキュー作品が好きな方は是非。
俳優さん達の演技も良い。 大島優子チャン、あの様に自然な演技ができるのか〜と関心しました!
とても良い作品です。
鳥取から東京行きの、バス停がウケました(笑)
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