わたしも「いねむり先生」を読んでからこちらを買ったくちだ。 本物の'無頼'とはこういうものか。 顔に傷をつけられたり、勝ち逃げを恨まれてボコボコにされたりといったエピソードが、さらっと端っこだけ書かれている。 相当無茶をした人だ。
父との確執、愛憎をめぐって淡々とつむがれる文章。ああ、これが本物の「生きづらさ」だ。 猫や猿の形をとって現われる狂気・幻覚・幻聴。
「いねむり先生」で他者から描かれた姿とともにとらえると、この人の形が、よりはっきりと見えてくる。
多くのレビューに私と同じ感覚があり、嬉しかった。色川氏の小説を私はうまく感じとることができないのだが、この本は、隣にどーんと色川氏が座っていて、どんな人も隣に座るのを許してくれるような感じです。そして座っているだけで心地いい。たまたま本屋でみかけて買ったのは、22歳23歳?くらいのころ。何年に一回読み返し、そのたびに発見がある。本当に大きな懐に守られているような、そういう感覚のある本です。こういう本は他に知りません。
とはいえ、これが2冊目の本。 麻雀はよくわからないので、阿佐田氏の本にもいまだ手をつけていない。
色川氏はご自分のダメさを延々と開示なさるが、それを支えるリズミカルな文章が秀逸。
「老女では殴るよりほかにもてあそびようがなかったのかもしれない」 おいおい。。。と思いながらも、なんだかおかしくなってしまう箇所多数。 戦後の暗いような明るいような雰囲気に酔わされる。
特に最後の「たすけておくれ」は最高。 医療ミスに対して「私はこれまで他人のミスに寛大でなかったことは一度もなかった。その基本方針をまげるわけにはいかない」と思い、あくまでも主治医に身を委ねて「命を賭けて友人を得よう」とする。 しかしそこには悲壮感もなければ、覚悟もない。 軽い、軽すぎる。そしておもしろい。 でも、この人は本気なんだろうな、ということが伝わってくる。 近くにいたら、絶対好きになっていた人だ。
こういう泥臭い人間味に満ちた映画は好きです。 キャストのその表現が上手でした。
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