主に明治から昭和中期に活躍した小説家、詩人、歌人37人の日常の食生活から彼らの人間像を描き出した作品である。一作家につき15ページ程度と少ない枚数ながら内容は非常に濃い。 ここに取り上げられたのは誰もが知っているような有名な人物ばかりであるが、食べるという『欲』から描き出された彼らはどれも人間くさい。石川啄木は人間くささを通り越して小悪党である。食生活もちょっと普通ではない人もいる。さすが文豪タダモノではない。
著者は主に彼らの作品や関連した文献から、食べ物に関する作品あるいは記述を探し出し、その作家の姿を描き、作品を批評しているが、彼の枯れた味わいの文章と合わさってなんとも言えない作品となっている。特に著者が編集者として交流のあった作家よりも、参考文献だけで書かれた作品のほうが素晴らしい。余分な知識と感情移入がない分想像がよく働くのかもしれない。
著者にしてみれば趣味と実益も兼ねた作品なのであろうが力作である。巻末に参考文献として掲載されているがどれもが古い。絶版も多かったのだろう。著者が古本屋漁りをしている姿が目に浮かぶようである。 作家論とも作品論ともエッセイともいえない、その作家の作品を読んでみたくなるような、著者にしか書き得ない傑作だ。
パッケージの蓮の花の絵にひかれて購入。画家は南伸坊氏でした。花の俳句について話す嵐山氏の語り口はラジオ深夜便の加賀美さんのようにおだやかで、眠れぬ夜におすすめ。17文字に凝縮された俳句の説明には郷愁と旅ごころがあり、しみじみとしてしまいます。
文士が食事をした料理店が、 そのいきさつと共に語られている。 ちょっと粋で、まさしく「ハイカラ」なのであろう。 料理店の案内本ではなく、 そこには隠し味である文士の哲学が込められている。
各の料理の写真も、 本当に舌をそそる様に撮影されている。
食べてみたい。 文士になった気分になるでしょう。
文人シリーズ最新刊。 ・悪妻1人に割く枚数が少なく、あまり深みがないように感じる。 ・今までの文人シリーズには、嵐山氏の文人への敬愛を感じましたが、妻(女性)に対してはそれが薄く、そのぶん深みがあまりなかったかなという気がした。 ・ただ、女性に関してここまで断定して言い切る文章も最近あまりないので、そこは貴重かな。
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