11歳でシカゴ・フィルとピアノで共演した天才ハービー・ハンコックが、“Miles School”を卒業してから73年に一発目として出したもので、当のマイルスが「あいつはみんなでやってきたことを台無しにした」と面食らったアルバムだが、周囲の当惑を超えてこのアルバムは、ジャズというジャンルを超えた大勢の人に愛され、メガヒット作となった。
ハービーは、“音楽道”というものがあるならば,記憶している限り、冷たささえ覚えるその道の求道者であったが、 その頃のインタビュー記事等によれば、彼の内面にこの時期大変化があったらしく、それとこのアルバムの生命力と大衆性は、無関係ではないとのことだった。
当時高校生だったぼくは、このLPを買い求め毎日聞いていた。 CHAMELEONのベースラインを聞いたとき、カメレオンが木の枝の上をペタペタ、ペタッと歩いてくる様を思い浮かべてみたり、 WATERMELON MANでは、笛を吹きながら西瓜を売りにやって来るというアメリカ南部の西瓜売りを頭の中に描いてみたりした。 リズムの変化の素晴らしさでMilesや後のPrinceにも影響を与えたSly Stoneをタイトルにした"Sly"では、16ビートのリズムでメンバーがプレイを楽しんでいる。 ラシッド・アリかと思わせるハービー・メイスンのドラムやコルトレーンかと思わせるベニー・モウピンのサックスが アヴァンギャルド・ジャズのカオスのイメージとは無縁の、ハードロックも問題にならない凄いノリの演奏になっている。 60年代のアヴァンギャルド時代の数多くのプレイヤーのアルバムを聴いていたものとしては、これは驚きののアレンジメントだった。
最後は、横になっているときの心臓の鼓動に近いゆっくりとしたリズムのVein Melter(直訳すると:静脈を溶かすもの)で火照った身体をクールダウンして終わり。
あれから36年。本然的に垢抜けているものは、いつ聞いてもやはり垢抜けている。
IT産業のCEOを紹介するという凄腕ヘッドハンター「ロジャー・ブラウン」は画廊を経営する美貌の妻と贅沢な生活を楽しんでいた。その実ロジャーは相手が高価な絵画を持っていると知ると、忍びこんでは贋作とすり替えるというこれまた凄腕の泥棒でもあった。今度の標的「クラス・グリーヴ」の持つ第二次大戦中にナチスが隠したといわれるルーベンスの作を狙ったが、どっこいグリーヴはITの専門家かつレンジャーあがりの怖い人殺しで、ロジャーは逆にGPS追跡の網から逃れられない窮地に立たされる。そして脈絡もなく人が殺されていく。妻がはたしてグリーヴに惚れて自分を裏切ったのか、そうでないのか、といった謎を絡めたあたりはいかにもネスボー氏らしいひねりが効いているが、「ハリー・ホール」シリーズの緻密さにハマった者にはこの単発作はとにかく粗っぽい。今流行りのトランスミッター技術を盛り込んだハードボイルド劇として割り切ればそれはそれでいい味がでている。
身長168センチ。僕は満足だ。
あそこまで追われる理由は何なのかは正直よく分かんなかったし、途中のこじつけたシーンもあったけど、 まじめなストーリーのはずなのに、爆笑を呼ぶシーンもあり、全体を通してヒヤヒヤする感じが最高。
そして、コンプレックスを偽るために作り上げられた自分が恐怖と悔しさでどんどん剥がされて 人間的になっていく。 これが共感の軸になっていて非常におもしろいし、本当にスカッとする映画だった。 エンドロールの急なポップミュージックが監督の思惑を表しているようだった。
設定はサスペンススリラーで雰囲気がマジメなくせに、実はコミカルで真のある大テーマを追っている。 もう最高としか言いようがない。
古典的なジャズに縛られず、様々なポップスミュージックを吸収し、ジャズというジャンルの中にそれを消化してしまう。
彼はとても器用に素晴らしい音楽を創り上げてしまう。
シングルで発売された『Chameleon』、Sly & The Family Stoneに影響を受け、そのまんまのタイトルが付けられた『Sly』、荒れ狂うような激しい演奏と、静かに流れるような繊細な演奏が、何も違和感無くそこに共存している。
この彼の素晴らしい音楽のセンスとクオリティの高い演奏やアレンジはそうお目にかかれない。
初めてこのアルバムを聴いた時に、本当に素晴らしい作品に出会えたと心から思った。
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