初中学編のOVAである今作。 見所はやはり今までチルドレンを支えていた筈の皆本光一が敵にまわってる点でしょう。 ネタとしては漫画にも無く凄く良かったのですが如何せん一話で終わるには短すぎます。 光一が捕まった経由などがほどんど表現されてない為ストーリーに入りこめずはっきり言えば置いてかれた感が否めません。 展開も早く、見終わった後は物足りなさしか残りません。 ラストも呆気ないですしもっと引っ張って欲しかったです。 せめて前編後編に別けてストーリーをもう少し掘り下げて作ってくれればTVアニメに負けないぐらい素晴らしい出来になっていたでしょう。 むしろあのラストの展開ならば話が長ければ最後は泣けたかもしれないです。 取りあえず……このOVAを見る人はコミックスを見る事をお勧めします。 澪やパティが学校に来ている為21巻以降の話になりますから。 アニメではファントムドーターすら出てない(最終話付近には出ているけど名前までは出ていない)のでアニメしか見ていない人ではキャラの立ち位置などが理解できず混乱してしまうと思います。
原作に相当入れ込んでいるので、ちょっと甘めの評価かもしれませんが。 一度読めば、古本屋行きの漫画が多い中で、何度も読ませる楽しさは群を抜いてます。
まず、声優さんの配役が素敵。 桐壺の演じ方が大げさすぎる等々の細かい点で趣味に合わない部分は在っても、 演出とか解釈とかの相違で許せる範囲。特にチルドレン3人の声は絶品。 私自身は、若いころは来生三姉妹だと泪さんONLY、現在は愛ちゃんONLYと好みの低年齢化が進んでますが、 南家三姉妹では春香さん一択で夏奈や千秋には興味なしだったのです。 でも、チルドレン3人に声があてられたら、可愛さに思わずゾクリとした位。原作漫画ではなんとも感じなかったのに。 特に、皆本に兵部の催眠がかかったときの声の変化は楽しかった〜。クソガキの声から艶のある声への変容がとっても素敵でした。 もう、平野綾、白石涼子、戸松遥以外のチルドレンはありえない。漫画読んでるときもチルドレンが3人の声でしゃべってる。
不二子ちゃんの声もフルメタのテッサと同じ人とは到底思えない。傍若無人&わがままな個性がよく出ていたと思います。 ゆかなさんは、これからも様々な役柄を演じ分ける声優さんとして、存在感のある人でありつづけると思います。
次に、4コマ漫画・巻末おまけの内容をストーリーに盛り込んでいる部分は、原作への敬意として評価できるし、 チルドレンの解禁シーンに昔懐かしい遊びが多数含まれるなど、スタッフの楽しさが感じられる部分も面白い。 また、原作の不自然だったり冗長だったりする部分をさりげなく変えている点も評価できます。 例えば、皆本と葵で京都に行く「世界遺産、ほな京都に行こか」では、グリシャム大佐をカットして台詞を皆本に移していたり、 「合体問題、ファンタスティック・トイ」では、ティムのゴッド消防ロボに戦闘機をぶつけるシーンにおいて、 不二子ちゃんの介在をなくして、薫が直接ぶつけるように変更していたりします。 原作の変な怪獣をカットして、バルキリーもどきにしていたのも好感。葵の「愛、おぼえてはるか〜」にはやられました。 他にも、薫ちゃんの引越しの話(「家庭崩壊、ゴクラク大作戦」)では、原作ではヤクザとの喧嘩だった引越し理由を、 「家族」の作文&母親と姉へのストーカー成敗に置き換えたりしています。 細かい部分は決してちゃらんぽらんな作りではない。
最後はOP/ED。 アニソンは、聞いているこっちがこっ恥ずかしい様なのや作品との関連を感じないようなものが多いのですが、 歌詞も曲もしっかりと作られていて好感。特に、可憐Girlsとチルドレンの声優さんで入れ替わっていたのは、 同じ歌詞、アレンジなのに印象が変わっていて楽しかった。
これだけで済めば★五つだったのですが。
ただ、原作でも重要な箇所を改変してる部分が散見されるのはいただけません。 特に、皆本と須磨(過去の指揮官達)の違いをはっきりと表現しないと、各キャラクターの行動と台詞に説得力を欠きます。 須磨の話、原作漫画の「そのエスパー、凶暴につき」(14巻)を削ってしまったせいで、 例えば、兵部がチルドレンの進級を祝う話「一場春夢、明日の思い出」において、 薫ちゃんが兵部へ訴える、「もしその人が皆本みたいだったら」「他のノーマルとは違うんだ」 「あいつが来てから、全部変わったんだよ、あたし達」とかの台詞が浮いてしまいます。平野綾さんの声は萌えるのに。 チルドレンが皆本に懐く理由をきちんと描写しないと、この絶チル自体成り立たないはず。(マイナス★三つ)
原作を陵辱するようなアニメ化(さくら荘のサムゲタンとか)もあるなかで、全体としては良識あるつくりなだけに残念です。
別に原作からの変更全てが悪ではない。ガンダムUCの様に原作とアニメとの間に差異が在っても素晴らしい作品はある。 銀英伝のアニメでは、原作におけるモートンの士官学校出で無いことへのコンプレックスを、 カールセンがマル・アデッタで散る場面に持ってくる等、原作への理解と愛と敬意の存在する変更もある。 でも、作品の根幹を成す部分を変更したり削ったりすることはやってはいけない。それは、原作への冒涜です。
「男子禁制、天使たちの午後」の様な、余計な話を追加するくらいなら、 皆本がチルドレンの担当指揮官になった経緯である原作漫画の「そのエスパー、凶暴につき」をきちんと映像化すべきでした。 いや、井上喜久子(ナディアのエレクトラ、女神様のベルダンディー)と藤村歩(ガンダムUCのオードリー・バーン)の 百合百合しい会話は薫ちゃんじゃなくても楽しいですが、絶チルでやる必要はねぇなと思うんです。
他人の作品の世界とキャラクターを使って、新しいドラマを作るなら、 三雲岳斗氏の小説「B.A.B.E.L.崩壊」の様に、絶チルの世界とキャラクター達でなければ成り立たない作品でなれば意味はない。 (「B.A.B.E.L.崩壊」を読んでない人は今すぐ読むべきです。原作への愛と理解と敬意に溢れた名作です。)
ということで、★五つから、★三つひいて2点のところ、原作への愛で1点追加で★三つです。
(2013/1/15 編集)
(総合7.5/10点)
29th sence.「手練手管(てれんてくだ)!天国に一番近い海」★★★★☆8/10点 騙し合い、化かし合いの連続がとっても阿呆で笑わせて頂きました。 未来変革という大儀に乗っ取った不二子婆ちゃんの欲望、変わり者ぶりの 異常なテンションと突っ込み所満載で、#27に匹敵する阿呆さ加減を堪能できます
30th sence.「呉越同舟(ごえつどうしゅう)!ご金庫破りは計画的に(はぁと)」★★★★★9/10点 主役、脇役も関係無くイジるノリの演出、高水準の作画、エピローグまで息つかせぬ 怒涛の展開など視聴者を虜にする完成度の高さに惚れ惚れします。 真面目(仕事)でありながらも遊び(楽しさ)を忘れぬ制作陣の気迫がビシビシ伝わってきます。
31st sence.「世界遺産!ほな、京都に行こか!」★★★★☆7/10点 葵の家庭環境の初披露を狙いつつも、サブキャラのテンションの上げ方が 尋常ではなく、敵含め、観ていて退屈させる隙さえ与えてくれません。 テレポーターの真の実力開花やオチといい、ここ数回の面白さには感嘆です
32nd sence.「珍味佳肴(ちんみかこう)!タッチ・ミー・イフ・ユー・キャン」★★★☆☆6/10点 前回のザッピング、賢木と志穂という同種能力者を組み合わせた意外性に加え、 全てを見通す力と身を持って知る経験の違いを明確に説くなかなかの一品です。 しかし、人名救助のオチや薫の存在の希薄さなど、やや詰めが甘いのが惜しい所
伊八号の見せた幻視で女王薫の悲劇の未来を知った京介、そして幻視のなかで皆本のブラスターの光線は京介の額を貫きます。 信じていた人に裏切られた悲哀で、大人になろうとしていた「京介」は、大人になる事を捨てた「兵部」へと変わってしまいましたが、 皆本に撃たれた薫は幸せそうでした。これが、先がもう無いことを悟った伊八号が未来の悲劇を回避するために京介へ与えた鍵なのか。 幻視のなかでのブラスターが京介の額を打ち抜いたのは、早乙女の弾丸が同じ場所を貫くことも把握していた伊号が京介に贈る復活への動機なのか。
京介にとって早乙女に撃たれたことが幻視の中の薫の様に納得いくことだったのならば、 志賀隊長との話で、「君は僕等の死を背負って生きるようにしたようだけど」とあるように、 蘇ってまで、あるいは死に切れずに同僚の遺志と能力を背負った生き方をする必要は無かったはず。 自分と薫との違い、早乙女と皆本の違い、薫ちゃんを自分と同じような目に遭わせないためには何が要るのか?
信じていた人に必要とされなかった絶望、信じていた人に裏切られた悲哀、愛していた人に撃たれた哀しみと諦念、 三者三様の結末を迎える関係を経験した(する)キャラクターのうち、「京介」だけは「兵部」となって死ねない。 「兵部」になってしまった「京介」自体が未来に伊号が残した鍵だということなのでしょうか。 紫穂ちゃんは皆本に「あなたは私達に幸せな思い出をくれた、未来は大人になった我々が作っていく」とフェザーを通して伝えましたが、 「兵部」も皆本やチルドレンに手を貸すOR独自の行動をとることでチルドレンに良い思い出を残す手伝いをするのでしょう。悠理ちゃんの件とか。
あと、なんかここまで引っ張られると、薫ちゃんに起きる悲劇を回避するともっと酷い事が起きそうな気さえしてきます。 皆本が何もかも捨てて目前の愛を貫ければハッピーエンドといった風情では無くなって来てますし。 そのジレンマをどう描いてくれるかと、賢木の言うデキちゃった後の痴話喧嘩も楽しみなところです。
また、不二子さんの「女のカン」の凄さについても触れられてましたが、どうも未来では皆本と薫はできちゃってるみたいですし、 以前の不二子ちゃんの言う「恋愛を成就させれば未来は変わる」というのだけでは済みそうにないですね。
2013/04/28 編集 2013/5/2、10 追記
新キャラ三橋姫子登場の「続・天使で悪魔」。子供の「京介」に潜む兵部が大活躍の話。 「京介」が、今の世界のエスパーの生き難さを自覚し、 兵部のエスパーに対する優しさ&「京介」の皆本達への優しさが、皆本と蕾見に棘を刺す。 「あなたが怖いのは、兵部京介が悪人じゃない可能性」という台詞がピリッと効いてます。
もうひとつの「甘い生活」は、薫の家出とユーリの変化を描く話。 兵部がユーリにかけてあげた催眠が、ユーリの個としての覚醒とともに解け、 悠理+ミラージュ+ファントムの三身合体での統合ユーリ復帰と、彼女が過去の罪を思う話。 冗談めかした話の裏側に、ユーリの痛みと覚悟が伝わってきて、薫とユーリが幸せそうな描写&表紙とあわせて好対照。
以上の二編で、兵部復活の布石は徐々に打たれてきていると感じます。
大人しい「京介」と融合しても、兵部は大人げない所を残してほしいと思いつつ、 続きを楽しみに待ちたいと思います。
以下、妄想込みでの推測。
兵部の復活は数ヵ月後との予知映像が登場。 これまで、服薬や、胸を押さえる描写等より、何か爆弾を抱えている伏線が張られていましたし、 皆本を子供のままで固定しようと画策する際に、 自分の命を使う覚悟を決めていることを考えると、限界が近いかもとも思われました。 子供の「京介」と爺の「兵部」が融合して復活する際は、肉体的には完全な状態で復活してきてほしいです。
復活の時期は、統合ユーリの過去と正体がチルドレンに露見するときだといいなぁと期待。 本巻内の予知映像で登場するときは、兵部は串刺し状態のままで、仮面のユーリ?が皆本をいたぶる場面で登場してきてます。 もう一波乱ありそうで楽しみです。
兵部がユーリに更生の機会だけ用意して、放置したままということは無いはず。 ユーリは、条件付の愛情で育てられた故に悪に手を染めてしまった罪を負ったキャラ。
皆本→薫ちゃん:「君はここにいていいんだ」(2巻) 早乙女→兵部:「この隊があるかぎり、君は君のままでここにいていいんだ」(29巻)
条件付の愛で利用される道具にされてしまった彼女を救えるのは、 兵部の様に条件付で許容された挙句の背信という、利用されて捨てられた絶望の深淵を覗いた者だけ。
澪との金庫破り脱出の話(「マジック・ガールズ」9巻)のエピローグの際に、 兵部から「正しければ良いってもんじゃない、そんな優しさが通用するのは幼い間だけだ」なんて嘲られたり、 「しょうがない」と言って桃太郎を処分(「逃亡者」8巻)しようとした皆本にはユーリの救済はできない。 バベルはともかく、チルドレンへユーリを受け入れさせられることも含めて、 改心ユーリの居場所を用意できるのも兵部と彼の作ったパンドラ以外にはないと思う。
これまで信じていたものが全て崩壊した人や 超能力のために居場所を失う人に無限の優しさをもって接する兵部の活躍が楽しみ。
読めば読むほど味の出る絶チル、深読みと妄想が止まらない。
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