有害コミックに指定されようが、採り上げた題材が一般社会倫理に反してようが 山本直樹の作品は純文学である。それは「本質的に不愉快で、読者に自己否定・ 自己超克をうながす」という文芸評論家福田和也氏の純文学の定義において。
そしてその不愉快さの底にコロリと、この上なくリリカルな情景が転がっている。 冒頭の短編「この町にはあまり行くところがない」のラスト、 主人公たちが歩く線路際の、夕暮れの風景を見よ。 指先が痛くなるくらいノスタルジアに覆われたアンバーな世界と、 その前に佇むしかない私たちがそこにいる。
その美しい世界は、あちらの世界や宗教の言う楽園郷のように私たちを魅了する。 しかし近いがそこに手の届かない乾きに 私たちは肌を重ねることで応えているのかもしれない。 繊細な絵柄に騙されると、危険な毒薬のような作品である。
正直言ってユニバーサル音源で、オールジャンルでドラマ主題歌を集めました!ってのがありありなコンピですね。楽曲でドラマティックなものが多いだけに、この集め方はちょっと乱暴ではないでしょうか。例えば、『白い巨塔』『愛し君へ』と感動モノが入るのならば、その後は、少々古くても感動路線で統一してほしかったし、洋楽・邦楽が混ざるのならば、せめてその近辺の懐かしい楽曲に統一すべきだろうし、これを一通り聴くのはちょっと苦しいです。最近のドラマで、そこそこヒットしたものが1枚に入っているので便利、多少お得、ということくらいです。収録曲に有名曲が多いだけに、作りの粗さが非常に残念。
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