アリアーヌ(オードリー・ヘップバーン)の一途な恋心がいじらしくて、可愛いらしい。今までのDVDで何度も鑑賞していますが、この商品には池田昌子さんの吹き替え音声が入っているというので、さっそく注文しました。いつも、ヘップバーンDVDを楽しむ時は、まず、オリジナル音声で見て続いて池田さんの吹き替え音声で見ます。一粒で二度おいしいですね。
今では何でもないけれど、原題のlove in the afternoonに「昼下がりの情事」という邦題を50年代に付けた人は、かなり大胆でセンスがあります。ヘップバーンの映画でなければ、一歩間違えると当時では成人映画の題名すれすれだからです。監督のビリー・ワイルダーは、「お熱いのがお好き」などに代表されるように、この映画でもエロティックな題材をいやらしさを出すことなく暗喩した表現で、実にスマートにおもしろおかしく描く天才です。つまり「分かる人には分かる」ように表現してるんです。もちろんそれが分からなくても十分に誰もが楽しめるように作られているわけで、そのあたりが今の映画監督には足りない「職人芸」ではないかと思います。耳年増でいたずら好きの少女のようなヘップバーンがチェロケースの名札についていたチェーンをアンクレットに見立てて、足首につけ、ゲーリー・クーパーを翻弄するシーンは傑作。アンクレットは今ではかなり一般的にもつける人も多いですが、元々はかなり特別な女性しかつけなかったのでないでしょうか?それは足首を強調するアクセサリーであり、そこには意味深なものがあります。試しにankleを辞書で引いてみて下さい。こういう映画は、きっと色々経験したり、年齢を重ねるほど、その面白さが分かるので、DVDで持っていて損はないかも・・・?
いまさら何も言う必要もないほど、誰にも 愛されている作品ですネ。 特にラストシーンは素敵です。悪漢ゲーリーが 終身懲役に服すところはホッとします。 オードリーの父親役もさすがです。
シナリオ作家志望に限らず、創作を志す者にとって、映画を見、その作品の良い点悪い点を吟味することは大変重要である……くらいのことは分かっているのだが、これだけ旧作新作ある中で、そして、こちらの自由な時間に限りがある中で、なにを見るのか? は頭の痛い問題である。
だから、本作「ビリー・ワイルダーのロマンチィック・コメディ」は、あまり見ることの無かった古き良きアメリカ映画達を見る良いきっかけになった。
と言えば聞こえは良いが、正直に言おう……。ここで取り上げられている3作のDVDお熱いのがお好き(特別編) [DVD]アパートの鍵貸します [DVD]昼下りの情事 [DVD]と共に本作ビリー・ワイルダーのロマンティック・コメディ 『お熱いのがお好き』『アパートの鍵貸します』『昼下りの情事』を買ったが、これら計4作が手元に届いてみると、その量に圧倒されてしまった。そして、DVDは後回しにして、手っ取り早く、本作だけを読んで済まそう、という不埒な考えを持ってしまった。
だが、本作を読み進むにつれて、その極めて緻密な分析に圧倒され(と言うか、細かすぎて、何が何やら分からなくなり)、本作を活かす為には、DVDも見ないことには話にならない、という事実を突き付けられたのだった。
で、お熱いのがお好き(特別編) [DVD]→アパートの鍵貸します [DVD]→昼下りの情事 [DVD]を順番に見た。最初は、めんどくさいなあ、と思いながら……。
だが、お熱いのがお好き(特別編) [DVD]が思いの外面白く、いつも間にか引き込まれた(マリリン・モンローは、今の基準から言っても色っぽい!)。そして、続けて見たアパートの鍵貸します [DVD]に、ものの見事にノックアウトさせられた。おばさんになったシャーリー・マクレーンしか知らなかったが、こんなにも可憐でほのかな色気もある、魅力的な女優だったんだ……。ジャック・レモンの演技も良かった。
早くもワイルダーの虜になり、これら2作は自分にとってのオールタイム・ベスト10入りを果たした。そんな興奮冷めやらぬうちに本作に戻った。今度はいやいやながらじゃあない。寧ろ積極的にだ。
惚れた女のことなら、どんな些細な事も知りたい、というのが男の生理。これは良い映画も同じだ。惚れた映画の魅力をここまで詳細に分析してくれている本作は、もう手放せなくなった。
とは言うものの、休日の2日で3作目は一寸きつい気がした。そう、昼下りの情事 [DVD]が残っていたのだ……。だが、気を取り直してDVDを見た。最初は正直、先の2作には劣るかな、と思った。が、見続けるうちに、その印象が間違いであることに気づいた。この映画も、僕にとって忘れられないものになった(オードリー・ヘプバーン演じるヒロインがべらぼうに魅力的だった)。
瀬川裕司先生の、本作における映画作品の選択はまったく間違っていなかったわけだ。
素晴らしい3作品の思い出を胸に、本作のページを繰るのが、僕にとっての新しい楽しみになった――それは、好きな作品に惚れるファンの心理もあるが、それだけではなく、映画作品の持つ企み(たくらみ)というか、そういう一流の創作作品の凄みを目の当たりにして、とても刺激になるのだ――(ワイルダーも凄いが、それを洩らさず書き表した瀬川先生も凄い、と素直に思う)。
中々見る機会の少ない作品を魅力的に紹介してくれた、本作に感謝! である。
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