静かな曲、激しい曲、有名な曲、無名の曲、それぞれが何の脈絡もなく2枚のディスクに盛り込まれています。38曲も入っていれば当然知らない曲が幾つかあるので、添付された曲ごとの簡単な解説本が役に立ちます。 クラシック音楽の「よく聞く部分」だけを楽しみたい人には適していると思います。 目当ての曲を聴くために購入したら、別の曲が気に入る、というオムニバスのいいところを堪能できるはずです。
ヴェンダース作品の空気感や色彩が好きな人には、間違いなく楽しめる作品でしょう。 マドレデウス(ポルトガルの伝統音楽・ファドをルーツとするバンド)の魅惑的な演奏シーンも、リスボンの子供たちの笑顔も、とても良いです。
しかしあえて不満点を挙げておきたいと思い、星3つとしました。それは日本語字幕についてです。 「其(それ)」「此処(ここ)」など、あまり日常的ではない漢字表記がなぜか用いられているのです。そのためテンポの早い会話シーンなどでは、字幕を追うのが苦しくなる感覚があります。 また字幕のミスも二ヵ所ほどあるようでした。(連続する二つのセリフに、同じ内容の字幕が二回表示される)
この点を星1つ減点して、星3つとしたいと思います。上記が気にならない人にはおすすめできる作品です。せっかくの良い作品ですから、発売元は改善すべきだな、と思いました。
ポルトガルと言えばファド、ファドと言えばアマリア・ロドリゲスが有名だが、よく知らないし、好きな方ではない(唯一 Alfred Marceneiro だけは例外なのだが)。また、伝統音楽の範疇だろう。最近のポルトガルものを知りたかったので、手始めに話題に上ることが多いこのグループのものを入手してみた。 ベースとなる旋律はファドのようだが、少なくとも伝統的ファドの様な感じはまったくしない。楽器はアコーディオンとギターなどのアコーティックが主体であり、キーボードは主に背景音を担当する。ドラムスは無い。 絶え間なく織り重なる伴奏にのせて テレーザ・サルゲイロ ( Teresa Salgueiro )がしっとりと透き通る様な声で歌い上げる。ゆったりと流れる様な独特のサウンドが特徴だ。タンゴの様なテンポが感じられるものも何曲かある。それでも、ビートの利いたロックの様なサウンドとは対極にあると言えよう。特にアコーディオンはこのサウンドに大きく寄与している。 テレーザの声はとても美しく、郷愁と哀愁と侘び寂びがごっちゃになった様な言葉では言い尽くせない、独特の感情が感じられる。これを聴いて心を打たれない人は居ないのではとすら思える。 特に Ainda と Milagre ~ Viagens Interditas は感動的だ。 今まで味わったことが無い感覚を得た。
ヴィム・ヴェンダース監督お得意のロード・ムービー。ただしこれまでの「さすらい」や「パリ、テキサス」と違って旅をする風景はあまり出てこない。それよりリスボンの美しい風景が心に残る。ヴェンダース作品久々登場のリュデュガー・フォグラーを始めとしてヴェンダース復活を印象づけた作品。特筆すべきは作品の中に出演し、演奏もしているマドレデウスの音楽。この映画をみたらマドレデウスの音楽を聞きたくなること間違いなしです。
なぜか気になる本だったので読んでみることにした。
哲学小説という聞きなれない分野、聞いたこともない作家、 アメリカやイギリスというなじみのある国のお話でもない。 でも、なぜかひかれて読み始めた。
グレゴリウスがあるできごとにより今までの生活をすて 自分の街、仕事、住まいを後にする。 そこが強調されて紹介されているが、それは物語の始まりの始まり。
アマデウ・プラドの本に出会い、それは母国語でもないのに苦労して読み進む。 その文章が太字で表示されながら、グレゴリウスとともに読んでいく感じ。 哲学小説といわれるのは、この文章があるからだろうか。 深く理解しようとすると、そこで挫折するのではないかと、適当に 読んでいく。よくわかる文もあり、納得して、うなづきながら読める文もある。
プラドをめぐる人々が興味深い。 それを追いながら、グレゴリウスも変化していくのが 飽きさせない。
ひきつけられるストーリーだ。
読後、何か、課題を終えたような達成感を味わえた。
おもしろかった。 敬遠せずに読み始めたら、夜行列車に身をおくように 導いていってもらえるような気がする。
|