米国は「テロリストをかくまった」としてアフガニスタンに侵攻し、日本もそれを支持した。ではフジモリをかくまう日本は、ペルーに攻め込まれてもよいのだろうか? 本書は、2001年1月に結成された日本の弁護士や大学教官からなる団体が、2000年11月に日本に逃亡してきたペルー元大統領アルベルト・フジモリを正当な裁きに服させるために、これまで日本でほとんど報じられてこなかったフジモリ政権の犯罪について論じた「フジモリ問題入門書」である(2004年刊行)。フジモリはペルーの民主主義制度を形骸化させ、汚職を行い、反対派を迫害し、秘密部隊によってバリオス・アルトス事件、ラ・カントゥタ事件などの深刻な人権侵害を引き起こし、不妊手術推進等の問題のある政策を行なった。その後、それらの問題の一部が明らかになり、形勢不利になるやいなや、ペルー人として大統領になったフジモリは日本に逃亡し、一転して日本国籍を主張し、通常なら難民受け入れに対して冷淡な日本政府も、内外の強い反対を無視してそれを認めた。著者達は、日本においてフジモリを英雄視する誤った論調が根強いことを逐一批判し、国際法において「不処罰との闘い」が進展しつつある状況を踏まえ、フジモリのペルーへの引渡しないし日本での訴追を要求する。フジモリが日本にいる以上、日本は当事国なのである。 本書は80頁ほどの小著であり、論点がコンパクトにまとまっており、読みやすい。他方、フジモリ政権の功績については論じられていない。その理由も本書では明示されている。本書の記述を全て信用してよいかは私には分らないが、この問題に関心のある方にはまず一読をお薦めする。
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