「フリーメーソン」、「スパイ」と刺激的な言葉に、ついつい、よくある”眉つばもの”あるいは”荒唐無稽なオカルト的”読み物かなと思ってしまう。しかし、読み進むうちに、これまで心の隅にひっかかっていた素朴な疑問が、「なるほど、そうか!」と解ける気持ちよさを感じ始める。 薩摩と長州の辺境の2藩が何故幕府を倒せたのか?脱藩した下級武士たちが何故自由に動きまわり、海外に行き、時代を動かす力を持てたのか?確かに素直に考えてみれば実に不思議だ。ここに「刷り込まれた歴史の常識」の怖さがあるのだろう。 日本の歴史の動きには、絶えず世界の歴史の動きが影響している。その当然のことを維新の背景として見事に透視し描き出した著者の思考は見事だ。 「フリーメーソン」、「スパイ」といった刺激的な言葉は、多分、著者が意図的に用いた挑戦的な言葉だと思える。これらの言葉がどうしても気にかかる方は、「人脈」、「意を受けた者」とでも訳して読めば、十分納得が行くのではないだろうか。
明治維新の立役者のほとんどが勢ぞろいした一枚の写真。 本書はこの写真を元にミステリーの形を取って「明治維新」を陰謀論で解き明かしています。 色々な所で評判が良かったので気軽に手に取ったのですが、初っ端からグイグイ引きつけられて読了まであっという間でした。
公式的には存在すら認められていない一枚の写真、その写真に写っている人物について、日本や海外の文献、ゆかりの土地の取材などを通じて、現在まで続くというとんでもない陰謀の存在を導き出します。 陰謀論というとそれだけで何だか胡散臭く感じてしまうのですが、学校で習う「死んだ歴史」とは異なり、各時代の出来事が有機的につながりを持ち、そこに生きる人々は生臭く、血が通っていてすごく面白いです。 残念ながら本書で出した結論については何ら検証する術がなく、真実は闇の中ですが、それは現在伝えられている権力者が作った正史についても全く同じだと思います。 少なくとも本書でみる限りは、この陰謀論で結ばれた歴史の方が筋が通っているように感じられました。
虚実の判断はさておき、本書は歴史を下敷きにした良質のミステリーで相当な面白さを感じました。 この著者の本は何冊か読んでみようと思います。
日本史をあらためて見直すようにします。明治以後の南朝の足跡についてのこれからを期待します。
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