綿矢りさは「インストール」「蹴りたい背中」「夢を与える」「勝手にふるえてろ」を読んでいたので私にとっては通算5冊目の綿矢作品。正直「勝手にふるえてろ」は読んで感想もあったんだけど今では内容も覚えてない・・・。ごめんなさい。私は「夢を与える」が好きです。にしてもほんとこの人には読むたび「あれ?自分は誰の作品を読んでいるのだっけ?」と思わせるほど書き方が達者というか変幻自在というか。若さゆえの文章力でしょうかね。今回の短編集もまるで全て別人が書いたオムニバスのような作品。表題作の「憤死」は最初「ん?」という感じでしっくりこないんだけど最後は「おぉ」とうならせるような作品。一方で暗喩的に主人公のアルバイトの「表面の華やかさ」が描かれていてそれが「憤死」をしようとした彼女に何か通ずるものを感じた。個人的なお気に入りは「人生ゲーム」。綿矢さんらしい書き分けのうまい作品。段々と歳をとるにつれ言葉遣いや漢字の量まで変えている。ただ少しおじいさんの書き方がなんとも不自然というか、それこそ「昔話の登場人物」のような言葉遣いに感じたのが残念。「トイレの懺悔室」も好き。久しぶりにぞっとする話だった。とにかくまだ彼女は若いので「色んな作家の顔」を持ってほしいなぁと思う。さてさて次回作が出たらまた「あれ?これ誰の作品だっけ」というのを楽しみにしますかね。
何もかもがバカらしく感じる。みんなと同じことをすることが虚しく思えてしまう。でも、自分は特別な存在ではなく、平凡な人間でしかないことも分かっている。
そんな心の葛藤やわずらわしさから解放されたいと思うことは誰にでもあります。
「“エロチャット”という手段を用いていて、作品に暗い影が射すのでは?」とも思いましたが、明るい雰囲気で最後まで読むことが出来ました。
しかし、“明るい”といっても微妙な心理を描いていて、奥行きを感じる作品です。
ラストが前向きなことも好感が持てます。
著者の作品は「ひらいて」が初めてで本作が2作目の購読です。 「ひらいて」の性描写が本作でどう変化するか気になり 予約して昨日届き、読みました。
同じように性的描写はありましたが、ある意味前作よりどぎついですが 美しくもありました。 女性の視点です。
「ひらいて」の主人公が大学を卒業してから同棲生活に入ったような 感覚になる物語です。 あやうい、あまりに無防備な女の子の物語です。
主人公の女の子「奈世」と男の子の「絃」(ゆずる)が 交互にそれぞれの視点で語り、物語が進行します。 しかし前作でも男の子の名前は「たとえ」君という 馴染みにくい名前でしたが、登場人物の命名にこだわりを感じます。
ラストはバスの最後部座席ではありませんが「卒業」のシーンを彷彿させます。 多分連作が登場するでしょう。 暫く前の新聞のインタビューでこれからどんどん書くと 宣言してましたから、次作も期待して予約をします。
最近、川上未映子、綿矢りさ、山内マリコ、金原ひとみ と若い女性の作品を読みましたが、綿矢りさが最も親しめます。
お勧めです。
思春期における女子高生のモラトリアムが軽妙に描かれた作品。不登校やひきこもりを引き起こした“軽薄な憂苦”と“優等生的な性”に作為的なあざとさが感じられる。また、これらの結びつきが安直であるので、女子高生の再生再起に迫真力がない。このため、作品から人生や人情の機微を受け取ることはできない。だが、メディアを席巻している上戸彩の演技は鑑賞に値するだろう。
著者の書く小説の主人公には感情移入しづらいことが殆どなのだが、本書の主人公には割かし早い段階で共感することが出来た。 人物像が人物像なので素直には喜べないのだが、「今」についての七面倒臭い解釈や、勝手に盛り上がって勝手に沈む気分の浮沈には 嫌と言うほど思い当たる点が存在する。 そうなんだよ、内言語だと比較的饒舌なんだよ。
主人公の女性は処女であることがバッドステータスのように扱われる昨今に於いて、片思いを胸に鉄の意思で貞操を守り続け「やらはた」を 達成した稀有な女性。 恋愛をテーマに書かれていますが、初恋の彼のエピソードは回想形式で語られるため、恋の行方にやきもきさせられる 種類の恋愛作品では有りません。 されるがままに妄想されて挙句勝手に震えてろ……。 理想は理想と理解していたからこその反応でしょうか。
著書「蹴りたい背中」はあまり楽しめませんでしたが、本作品は短時間で読破できました。 あらすじを読んで鈍くとも何か感ずるものがあった方に、おススメします。
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