芥川賞受賞の現役僧侶が書いているものだが、文字自体も読みやすく内容が項目別に分かれているので非常に読みやすい。(最初から順に読まなくても良い) 仏教の言葉を使い、それを分かりやすく説明している。一言の言葉の重みや強さが仏教にはあるんだと感じた。 普段の日常生活に何らかの悩みや不安のある方に、この本で少しでも心と体が楽になれば幸いという作者の思いが良く伝わる本だと思った。
般若心経の本は売れるらしく、相当怪しげな内容の本も見受けられるが、本書は比較的筋のいい本だと思う。まず、「般若心経は難しい」とはっきり宣言してごまかさないところがよい。そう簡単に分かるものではないが、目いっぱい努力して、一歩でも二歩でも分かってもらおうという筆者の誠実な姿勢は好感が持てる。
次に、「縁起-無自性-空」の問題に色々たとえ話を混ぜながらじつに丁寧に説明している。これもこの本の筋のよさである。この問題に興味をもたれた方は中村元博士の「龍樹」も併せて読まれると理解が深まると思う。
原始仏教と大乗仏教の違い、それから大乗非仏説については、もっと明確に書いて欲しかった。ここをごまかしてはいけない。原始仏教の話と大乗仏教の話がないまぜのまま書かれている。読んだものは混乱したまま「分かった気」になってしまうだろう。星一つ減ずるゆえんである。
禅という現代人にとってとっつきにくい分野について、噛み砕いた表現で読み手に理解してもらおうという著者の意図が感じられる良書だと思います。 この著者は臨済宗の副住職でありながら、西洋の哲学などについても造詣が深く、洋の東西を問わず深く万物について考えてをめぐらしています。 ただそのためか、逆にわれわれ一般人からすると、本書の内容がやや難解に感じさせる原因にもなっていました。 個人的には、本書は哲学書に分類するのがもっとも適切だと思います。
原文の引用が多すぎるのではないか。著者の解釈がより必要と思う。
『中陰の花』です。 芥川賞を受賞した中編の表題作と、短編『朝顔の音』を収録します。 筆者は現役の僧侶。 中陰というのは、この世とあの世の中間のことです。 当然ながら作品は、僧侶ならではの宗教観が滲みます。というか表題作は、主人公も僧侶です。 仏教用語も多いですし、かなり難解ではあります。物語的な面白さ、という部分ではあまり期待はできません。 ただ、水中クンバカ、虫の知らせは中性子同士の感応、量子テレポーテーションなどといったことを交えながら語られる主人公の日常は、読者にも生と死の問題について考えさせてくれます。 本文は難解ですが、巻末の河合隼雄の解説が良いので、参考にしながら読むといいと思います。
併録の『朝顔の音』は物語として面白いです。女主人公を描きながら、僧侶ならではの宗教観が入っていて個性になっていると感じました。
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