最強の超能力者を生み出す―そんな、人を人とも思わぬ実験の
果てに生まれた、神にも等しい力を持ってしまった一人の少女が、
自分を造りだした科学者に決して成就する事の無い恋心を抱く、
残酷な片思いの物語。
後の『砂漠に吹く風』『死神の惑星』に連なる、時の女神フェアリィと
彼女の永遠の想い人エリィ(=シロッコ)の最初のエピソード。
「ヤキソバ」「ミンチ=ハンバーグ」「ひよこの柄のおふとん」等
所帯じみたアイテムに、SF的世界観の構築と、悲劇へと繋がる
キーワードの役目を担わせている作者の妙技を、是非一読して欲しい。
ギャグのセンスが有る漫画家さんには恐怖物を上手く描く素養のある方が多く、奇才明智抄とホラー物の相性が実に良い事を示した作品です。
河童=猿猴(エンコウ)「親に殺された子供がなる水妖」を狂言回しとした連作短編が6作収録されています。
過去作者が多用したシュールな設定から、今回は猿猴と言う民話的な物に代わった事により、逆に作り話を読む安心感が薄れ、隠匿された児童虐待の持つ恐ろしさを際立たせる為の技法に見えた程、心胆寒からしめる作品が有りました(第二話、四、五話)。
特に二話に出てくる女性サヤカの描写が余りにも凄まじい為に、良くある落ちが逆に救済感を強く醸しだしてて、いや、確かにこういう魂には人間界の罰則が無意味に思えてしまう時が有るなあ、と思わす納得してしまいました。
まったく、少女や猿猴のデザインが可愛いだけに参りました。
決して誰もが楽しめる作品では無いと思いますが、傑作だと思います。同時収録の「砂漠蛙」も佳作です。
氏のちょっとしたファンで短編集もいくらかもってるが、もうちょっと漫画映えする作品あると思うけどなあ?熊の木本線、北極王などは結構良かったですが。まぁ、でも読む価値はあるとは思います。
作家明智抄の異才天才を実感できる素晴らしい作品。人物設定や話の展開が素晴らしい。ストーリー展開や登場人物の心理描写における目の付け所が異彩を放ち、シュールであり、ユーモラスでもあり、なにより頭のいかれた登場人物全員がそれぞれ実に神妙。特に初期の頃のシリーズ数編が飛びぬけて素晴らしい。明智抄氏は正統派少女漫画のようにどうにか言葉でその作品の素晴らしさを説明できるものとは格段に異なる才能がおありなのではと思う。もし漫画家専業で活躍されているのだとしたら何とももったいない。漫画家としてのご活躍と併せて他の分野でもぜひぜひ才能を発揮して欲しい等と思い一ファンとなって期待してしまう。ただ約15年以上ぶりに見ると美麗なイラストの表紙に驚いた。すごく美しいイラストであるが作品のすごくシュールで異質で、でも最高にユーモラスで忘れがたいストーリーが伝わってこないと感じられて少し残念。
「始末人」と表題作にありますが、単純な「勧善懲悪」モノではありません。最近はやりのうすっぺらい感動物語とも違います。始末される人、依頼する人、みんな自己中心的で1度読むだけでは感情移入できないかもしれませんが、何度か読むうちにストーリーの隠された意味に気がつきます。そして、自己中心で勝手なキャラたちが自分にシンクロして心の奥深いところをチクっと刺してきます。この著者の作品は読む年齢によっても感じ方が変わる作品です。
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