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淫売婦,移動する村落他5篇 (岩波文庫緑 72-2)

収録作品は「淫売婦」「セメント樽の中の手紙」「そりや何だ」「労働者の居ない船」「山抜け」「坑夫の子」「移動する村落」の７編。「海に生くる人々」と同様に海の労働者を描いた作品の他に山岳地帯の肉体労働者の過酷で諦観にみちた生活を描いた作品が印象深い。ワーキングプアを描いた作品としてゾラの「ジェルミナール」、スタインベックの「怒りのぶどう」とあわせてお勧めしたい一冊である。

29歳の誕生日、あと1年で死のうと決めた。 (オープンブックス)

日本感動大賞の大賞作品。

派遣切りや婚約破棄、父親の介護と困難が続くが中で、生きている価値を見出すことが出来ずに29歳の時に、ラスベガスで大勝負した後、30歳になったら死ぬと誓う。
目的を持った彼女は強かった。
資金を貯めるため、派遣社員と未知の世界であった銀座ホステスの掛け持ちに加え、休日はヌードモデル（これも初体験）をするなど、懸命に資金を稼ぐ。

本作品から最も強く感じたことは「人生は目的を持つことで不可能も可能となることがある」という点だ。
著者の場合は、死ぬというネガティブな目的であったが、その前にラスベガスで勝負というユニークな目的もあってそれが人生の好転に作用したのであろう。
また、派遣社員というシステムは、将来の明るい展望を描くことが困難であり、人をここまで追い込む気持ちにするのか、という点が印象的。
果たして現在派遣社員で働く方はこの内容に共感するのだろうか。
もし、著者のような派遣社員の多くが、真面目に働いても公共料金すら滞納するような日々の生活に疲れ、努力しても決して這い上がることが出来ない状態に絶望しているのであれば、雇用制度自体の不備を正す必要があると思った。

読み始めから1.5時間程度で読了するボリュームであったが、生き方を劇的に好転した著者の考え方や行動力には感動した。
きっと読者の考えや行動を変える力も持っている一冊だと思う。