近年、小津安二郎や成瀬巳喜男の作品がDVD化されたり、BSで放映されるなど、昭和20~30年代の邦画が再評価されています。川島雄三も、もっと注目されていい監督だと思います。この作品も、人物の描き方にとても味わいがありますよ。
宝塚にも歴史にも疎いのが幸い(!?)して好きな映画の一つです。まぁ、そんな私でも、戦に負けて茶々が城に火を放つシーンなどはかなり美化されてるのでは?と漠然と感じたりもしました。でも映画はみな、面白くするために大なり小なり脚色されるものでしょう。実力派俳優をそろえ、豪華絢爛で目の保養になったし、宝塚トップスターの経験を生かしたであろう和央ようかさんの気迫に満ちた演技は、他の女優には無い女城主の貫禄を出せてたし。昔の日本の女優は貫禄ありましたよね?今は綺麗になった変わりか、貫禄だせる女優はなかなかいないでしょう? 小督が千姫を助けようと単身敵の城に乗り込んで、千姫と再会したシーンでは皆の思い合う姿に涙したし、家族の物語としては秀逸かと。 一つ疑問に思ったのは中村獅童さんの家康、髪が真っ白なのに肌つやつやで精悍な感じって、ありかな〜?と。いいのかな、格好良ければ。
井上靖氏の自伝小説はほぼ全期間を読みました。私は井上氏の母は、彼が少年時代の物語ではとてもしっかりしているような印象を持ちましたが、この本の中では日々老いていく様子が書かれていました。時の移り変わりと、人は誰しも老いていくという悲しさを感じました。少年時代や、他の時期の物語も読んでみると良いと思います。
井上靖の自伝的長編小説です。 大正時代初期、ようやく旧天城トンネルが完成した下田街道沿い湯ヶ島の小学校に、主人公の洪作少年が通った六年間を描いています。 穏やかな気候で知られる伊豆の豊かな自然のなかで成長する洪作少年の物語は、「おぉ、これだけの経験をすれば、小学生としては充分、充実している」と、感激する豊かさでした。
小学校低学年の時には、気分のままに保護者であるおばあさんに八つ当たりしたり、近所の親戚の家に泊まりに行ったはずが、黙って帰ってきてしまったり、それなりに幼さがあるのですが、 中学年から高学年に掛けて、友達とけんかをして怪我をさせてしまったり、かわいがってくれた従姉妹のお姉さんが死んでしまったり、親戚の激しい兄弟げんかに接し、嵐の夜にはおばあさんを助けて役に立ち始めたり、気になる女の子が転校してきて、憧れを感じ、反目し、旅行に行っては聡明な同年代の子どもに感心し、勉強を教わっていた先生が神経衰弱、温泉でのマナーのあれこれ、様々な体験をし、また、それぞれの事件に、周囲の大人が様々な反応をし、洪作はそれらを全て吸収していきます。 「子どもは遊ぶのが仕事。」 と言うのは、このような経験を積むことが目的だったのだな。と納得してしまう一冊でした。 エンディングに近くには、老人をいたわる心が芽生え、自主的に学習に取り組み始める瞬間があり、子どもではなく男として振る舞わなければならないと感じ、級友と将来つくべき職業を初めて語る、など、すっかりたくましく育った洪作がいました。
父親が井上靖の作品の中で一番好きだと言っていたのを思い出して、5年前に購入したものの、山登りをしたことのない女性である私にとっては、あまり理解できないのではないかと思い込み、本棚に飾ったままにしておきました。
しかしながら、読み始めてみると、自然描写だけでなく、ストーリー展開や人物描写も素晴らしい小説だということが分かりました。昭和30年代の日本の社会の様子もよく描かれています。敢えてこの作品を山岳小説という先入観を持たれずに読まれてもいいのではないでしょうか。
井上靖の自叙伝的小説や歴史小説を先に読まれた方、この小説も是非読んで下さい。
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