かつてレビューを書かせていただいた『ヒットコレクション 決定盤』など、1枚もののベストはこれまでにいくつも出されているが、リアルタイムでも親しみを持ちつつ、中古で手に入れたアナログの2枚組ベストなどをじっくり聴き込んでいた立場からすると、たとえば桑田佳祐少年がみごとにハマったという「わかれ雨」のように、1枚ものからは外れてしまうような比較的地味な楽曲にも魅力的なものが多い……、それがクールファイブなので、シングルA面曲が発売順にまとめて聴ける、こういった企画はとてもうれしい。とりわけ、ディスク1後半の濃密な楽曲のつるべ打ちには言葉もなく、ただ圧倒されるのみである。
個性的な髪型の小林さんが歌う、一部マニアの方々(含むオレ)に大人気の「イエスタデイ・ワンス・モア」が入手しやすい形で商品化されたことも喜ばしいことだ。
加えて、2007年リリースのCD-BOXからはオミットされてしまった「追憶」「夢待ち人」―どちらも有名な洋楽に、新たな日本語の歌詞をつけたもの―の2曲も収められ、シングルA面曲に関しては、これさえあれば“ほぼコンプリート”となった。ただし、1985年11月にリリースされた「枯葉小僧の子守唄」(この曲も、CD-BOXには未収録)のみ、前川さんのソロだという判断なのか未収録で、後述のリスト等からもオミットされている。地味な曲ではあるが、そこだけ惜しい。
2分冊のブックレットには収録全曲の歌詞、シングル/アルバムリスト、「長崎は…」を作曲した彩木雅夫氏による寄稿、および岡村晃氏による解説を掲載。収録シングル50枚のジャケット写真は、ブックレット(モノクロ)&ディスク収納面(カラー)に掲載。
音質は上々。カーステとの相性もバッチリだと思うので、安全運転のお供にもどうぞ。
なお、ボーナスのカラオケ6曲だが、オリジナルとそうでないもの、コーラス入りのものとそうでないものが混在しており、ちょっと微妙な感じだが、「資料」として考えると、やはり貴重なものといえそうだ。
まずはじっくり、このジャケットを見て欲しい。 デザイナーや制作スタッフの、クールファイブへの熱い思い入れが感じ取れるのではないだろうか(実際、詳細な解説もついている)。 シングルだけで50枚以上も出ているため(南州太郎似の、小林さんがソロを取る「イエスタディ・ワンス・モア」を含む)、1枚ものベストだけではさすがにその全貌まで迫ることは不可能なわけだが、筒美京平作曲のバリー・ホワイト調歌謡「さようならの彼方へ」、歌謡界の≪夜のワーグナー≫・藤本卓也作曲「愛の旅路を」ほか、名曲揃いである。 もしあなたが未体験なら、まずは聴いてみて欲しい。そして、前川清の抑制をきかせつつも熱いヴォーカル、まさにクールなコーラスワーク、そしてタイトかつゴージャスなバックトラック、これらが滋養強壮剤の如く渾然一体となって溶け込んだ≪クールファイブ・ワールド≫に、ノックアウトされるべきである。
半ば諦めかけていた西田佐知子のコンプリートBOXが遂に出ただけでも感涙もの。未CD化曲が殆どを占めているが、ここに収まりきれなかった名曲(実質上のラスト曲「テレビを見ている女」や筒美京平作曲のB面曲、「ブルーライトヨコハマ」のカバー等)がまだ沢山あることを思えば、彼女ぐらいの大歌手なら10枚組でも良かったはず。復帰の声が止まないちあきなおみ同様、彼女ももっと脚光を浴びてもいい筈だ。
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