ユメはささやかなものでいい。それが何かを満たしてくれるのなら。 ユメを見ている間(船を建てている間)はそれが後に残酷なものになるとは分からない。 ならユメを見続けよう。船を建て続けよう。それがイビツな形になっても恐れないでいよう。
どこにも存在しえない「ユメの国」を書いたのが上巻。
かって確かにあったはずの友達、そこにいたはずのこにゃこ……。 いまはもうない、何らかの形で失われた幸せがどれだけでも紙面から襲い掛かってきます……。
失われたものが今に繋がっていて、今は一瞬後、百年後の未来に繋がっていて、その後もどんどん繋がってゆく、それは幸せなのでしょうか。希望と呼べるのでしょうか。 不思議な読後感は、鈴木志保さんのほかの作品の透明感と相変わらずでした。
読んでいて感じた「喪失感」を「物足りない感」と勘違いしているかもしれないけれど、だから星三つ。
是非オリジナルの晩春も見ていただきたい。まったく現代においても色褪せていない小津監督の昭和24年作品である。小津監督の映画によって作られたであろう日本映画界の太い流れを市川監督が見事に再現しているように思います。
昭和24年に晩春が出来た事が未だに想像できないでいます。もちろんこの市川監督作品も素晴らしいと思いますが、小津作品を越えているかと聞かれれば、越えていないと言わざるをえないです。
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