主演のホセ・ファン・ダムは本作品初演時からの聖フランチェスコ役。天使役のドーン・アップショウは澄んだ歌声で天使にぴったり。奇抜な演出はピーター・セラーズ。 1992年メシアン死去の年にザルツブルク音楽祭で上演された舞台設定と基本的に同じです。その時はエサ=ペッカ・サロネン指揮、ロサンジェルス・フィルハーモニーの演奏でした。フェルゼンライトシューレに組まれた奇抜な舞台装置にびっくり!(奇抜な舞台装置の様子はこのCDに同梱のブックレットにモノクロですが掲載されています。)舞台上にはテレビがいっぱい、目の前には蛍光管が組まれた巨大なパネル。一体何が始まるんだ???とワクワクしました。蛍光管パネルとテレビは音楽にシンクロしていて効果抜群。カトリックの修道女の人たちも大勢観劇にきておられ、観衆全体が身じろぎもせずに見入っていたのが印象的。途中夕食タイムを挟んでトータル6時間という上演でしたが、至福の時間でした。これを見てしまうと他のオペラが薄っぺらに見えてしまい困ったものです。1992年上演時には天使の衣装が真っ赤で翼がついていましたが、その後は変更になったようです。 ケント・ナガノ指揮の本演奏の方が音色と技術面で一層満足いくものだと思います。音楽面での集中力と緊迫感はさすがです。
アッシジのフランチェスコと言えば、画家ジョットよる「小鳥に説教をするフランチェスコ」という作品で有名なイタリア人修道士である。フランチェスコは裕福な商人の家に長男として生まれ、両親からは将来を期待され、何自由なく育てられた。ある日神の啓示を受けたことにより彼は修道士になる決意をする。父親の前で両親から与えられた物を返納し、衣服さえも脱いで返した。その後は修道士として自他ともに厳しい活動に身を投じることになる。本書は、聖フランチェスコの生涯を詳細に研究し、しるしたものである。特に修道士としての彼の活動に関して詳しく知ることができる。また、彼が創設したフランチェスコ会派の精神についてわかりやすく説明している。著者が述べている様に、フランチェスコの教え(自然との一体感、人間の尊厳と自然への敬意、対話の実現と平和の熱望)は、時代を超えて、今もなお生き続け、現代人に雄弁に語りかけているのである。
中部イタリアのフィレンツェ・シエナが位置するトスカナ、中世地中海の多様性を内包したアンコーナがあるマルケ、アッシジを中心とするウンブリア地域などの聖堂を中心に歴史と美術について有識者が記述しています。時代的には、11世紀から13世紀の盛期中世と呼ばれている時代の伽藍建築や聖堂内部のステンドグラス、壁画が美しく紹介してありました。
観光のお供につきものの中部イタリアの料理の項目もあり、実際にこの地域を訪れる際のガイドブックの役割も果たせそうです。 参考になったのは、各聖堂のファサードだけでなく、平面図が掲載してあり、それぞれのページの写真を撮った位置と方向が明示してあるので内部空間のイメージが浮かびやすく理解しやすいところでしょう。
筆者の金沢百枝氏はロマネスク美術の研究者で、小澤実氏は西洋中世史の研究者ですから、各地域の美術と歴史の記述は分かりやすい言葉で書かれていますが、含蓄のある内容でした。
32ページには、ピサの斜塔で有名なサンタ・マリア・アッスンタ大聖堂の荘厳な全景が映し出されています。中庭を囲む回廊の差し込む光と影が風格と威厳を作りだしていました。 歴史文化の啓蒙書ですし、読み物としても優れていますが、オールカラーで写真も多く、壁画などの美しい発色を眺めているだけでこの地域を訪れているかのような疑似体験ができました。 本サイトの商品の説明に目次や内容が詳しく記載してありますので、その点は省略して読後感を記しました。
神聖な気分になり、自分が旅する気持ちでじっくり落ち着いて見られます。
著者の目を通して、かつて歩んだ須賀敦子にとってのアッシジが今もそこにひっそりと在ることをかんじさせてくれる。美しい写真の数々、静かに語りかけてくる文、アッシジという町をそっくりそのまま伝えてくれる本に出会えた。聖フランシスコの生きた風景、日本人が半日限りで通り過ぎてしまっては出会えない場所や人、私ももう一度アッシジへ行きたくなった。
|