国連競争試験・JPO試験の概略のほか、巻末には国連競争試験の 各科目のサンプルが載せられている。 本書の白眉は、実際に国連に勤めている人の手記であろう。 これを読むだけでも国連という職場の雰囲気をつかむのに 役立つはずだ。
書名でも触れられているように筆者がITUという国連の専門機関の事務局長を務めた際の経験をもとに、国際間の交渉のヒントが複数章にわたり、記述されている。
筆者は、ともすると短所として捉えられている日本人の行動、具体的には決断までに時間を要することや個人としての意見をなかなか明確にしないことを、むしろ長所であると記述している。つまり、短期的な利益を追求するよりも長期的な視野で判断し、個人として意見と突出させるよりも組織内の意思を統一した上で行動をおこなうため、より大きな成果を出せることが日本人の特徴としてあると述べているのである。 しかし、その特徴のゆえに、国際間交渉で日本人が少数派に陥ってしまったり、相手に意図が十分につたわらず、相手から有利な条件を引き出すことができないという筆者の主張には説得力がある。
日本人の特質を踏まえたうえで、交渉をおこなうヒントが本書では散りばめられている。筆者は国連専門機関の事務局長という立場であったため、ビジネスマンの交渉においても100%当てはまるわけではないが、そのエッセンスを活かすことは可能であろう。本書はこれから業務上、国際交渉に望むという立場の方に十分お勧めできる。
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