この作品の公開当時に生きていた人たちは、この作品に対する思い入れは大きいと思う。セリフを一切廃し、歌だけでストーリーを綴る全く今までのミュージカルにもなかった方式を採用し、ケン・ラッセルエキセントリックな映像で描き切った本作の衝撃は凄かった。ラジオでは「ピンボールの魔術師」がひっきりなしに流れ、街にはロジャー・ダルトリーのTommyの姿がポスターとして氾濫していた。学校でも映画を観に行った友達との会話で盛り上がったことを思い出す。
今でこそドラマ仕立てのプロモーション・ビデオは一般的になっているけれども、本作は今のPVの原点でもあり、単なるPVの枠を超越したロック・オペラとして全く異なる迫力の映像を体感できるので、今の若者が観ても単なる長編PVなんて思わないことは間違いない。登場するアーティストもザ・フーのメンバーだけでなく、エリック・クラプトン、エルトン・ジョン、ティナ・ターナーと凄い人たちばかり。 映像も冒頭の空襲の中に現れる防毒マスクをした下着姿風の女の子たちのシーンや中盤のアン・マーグレットに向けてテレビから大量に放出される泡や豆スープのシーン(撮影に3日かかったらしい)などは今観てもびっくりしてしまう。 そんな豪華メンバーの音楽と強烈な映像を楽しめる逸品であることは間違いない。
DVDとしての画質は他のレビュアー書いているようにあまり良いとは言えない。先日、BS NHKで放映されていたが、それを観てもやはり画質はあまりよろしくなかった。オリジナルの画質があまり良くないのか日本で手に入るものには限界があるようだ。
いわゆる「そして誰もいなくなった」形式の作品。特徴としては、集められたメンバー同士が知り合いで、互いにいろいろな感情を抱えていることだろうか。そして、お約束通り、徐々に人数が減っていく、というパターンをたどる。
巻末の解説にもあるように、この種のある意味使い古されたネタをやるにしては、インパクトに欠ける、というか、パンチが弱いと感じる。それこそ、本家『そして誰もいなくなった』とか、あるいは『アリスミラー城殺人事件』の方が鮮烈だったと思う。パズル作家という情報はまさに、本作の印象と合致するかな、という感じ。ただ、こちらの方向へ進むならば、もっと緻密にするなり、ひねるなりする必要がある。
また、個人的には、クリスティの「そして誰もいなくなった」に小説版と戯曲版とで異なる結末だいう、解説記事が一番興味を引いた。
ずっと廃盤が続いていたのでファンにとってはうれしいアルバム。紙ジャケは扱いづらくて個人的には苦手なのですがこれは紙ジャケの利点を使ってLP盤のように馬車の窓が切り抜きになってるのがうれしい。さらに裏は窓からキースのケツ・・・これもうれしい・・かな? リンゴ・スターやハリー・ニルソンなどの遊び仲間と金をかけつつも軽い感じで作られていてすごくリラックスした仕上がりになってます。(ディック・デイルやジョー・ウォルシュなども参加) なかでもビートルズの『イン・マイ・ライフ』での素朴なキースのヴァーカルは涙なしでは聴けません。 他にもキース特有のぐだぐだした発音&後ノリで歌うセルフ・カバーの『キッズ・アー・オールライト』やサーフ趣味のキースらしいビーチ・ボーイズの『ドント・ウォーリー・ベイビー』(シングル・ヴァージョンはファルセットで歌ってます。)など演ってます。 ライナーによると11.〜18.は今回、初収録の未発表曲らしいです。 ザ・フーという、あの4人による魔法が解かれたキース・ムーンが1人のヴォーカリストとして聴かせてくれる作品です。
1975年作品。録音は74年暮れでこの頃はまだまだキースは大丈夫だった。贅沢な仲間達とワイワイ愉快に作成されたであろうこの作品は彼のフーでは見られない一面が満載である。太鼓も2曲くらいしか叩いていないが、歌は全曲歌っており、これが本当に素晴らしい。インマイライフなんてオリジナルよりも説得力があるね。「四重人格」ベルボーイでの悲しげな哀れな歌い方に感心した方には泣けると思うなぁ。演奏も素晴らしくて隠れた名盤ではないでしょうか?ボーナストラックもスティーブ・クロッパーがプロデュースしていたりで、交友の深さが窺い知れる。この頃のThe Whoの「By Numbers」や晩年の「Who Are You」でのプレイを聞いて首を傾げてしまうよりもコレを聞いたほうがすっきりするかもしれない。3回聴いたけれど飽きないね、素晴らしい。
ベスト・アルバムというものがこの世にはたくさん存在していますが、この『WHO'S BETTER, WHO'S BEST』はかなり曲が吟味されている印象があります。 THE WHOのベスト・アルバムは他にも存在しているのですが選曲と曲順の妙はこのアルバムが一番だと思います。ベスト・アルバムというと曲順が年代順になっているが多いと思うのですが、このアルバムは違います。 その配曲の妙を楽しんで聴くのも一興かもしれませんよ。
|