最近音楽ビデオタイトルをDVDで再発するときは5.1chサラウンドにリマスタリングするのが米国では一般的ですが、残念ながらこのタイトルはただのステレオです。おまけにライブ自体がそうだったのか後からオーバーダブしたのか真意はわかりませんが一部カラオケを使っていると思われる曲もあります。(使っていない曲と音色が全然違うのですぐわかる)良くも悪くも全盛期のELOが見れるだけでDVDだからどうとかいうものはディスカバリーのチープなプロモ以外ありません。(全曲入っていますがこれも音が悪いのでCDの代わりにはなりません)
例によってUK盤を聴いた限りでレビューしています。ELOは1986年に一旦解散した跡、2001年にジェフ・リンがほとんどひとりで録音したアルバムZoomを発表しました。このアルバムに前後してアンソロジーFlashback、リマスター再発4タイトル、ベストアルバムUltimate CollectionとEssentialELOなどが出ましたが、予定されていたツアーはセールスが伸びずにキャンセルとなり、リマスターも性急な計画が齟齬を生じて途中で放置されてしまいました。
今回のベストアルバムは、Sony-BMGが全面的にバックアップして世界的なプロモーションを伴うものであり、UKでは全国チャートの6位まで上昇したタイトルです。内容はシングルコレクションで、なぜこの曲がという不思議な選曲もありますが、主なヒット曲はほぼ網羅されています。特に、ZoomからのAlright、それからFlashbackにしか収録されず、なかなか聴くのが困難だったXanaduの2000年バージョン(リードボーカルはジェフです)が含まれているのが特徴です。
さらに、日本盤ではUK盤からWild West Heroをカットして、かわりにT1Twilightが収録されています。この選曲はテレビドラマとのタイアップなのですが、それを抜きにしてもELOのポップソングとしては白眉とも言えるキラーチューンですので、この曲を足がかりにELOのポップワールドを体験していただければと願っています。もちろんそれ以外にも映画「エターナルサンシャイン(のトレイラー)で評判を呼んだMr. Blue Sky、BeautifulSouthがカバーしたLivin' Thingなども入っており、ジェフ・リンのポップセンスのショーケースといえます。
音質としては、2000-2001年のリマスターにさらに磨きがかけられています。価格的にも内容的にもお勧めできるコンピレーションだといえます。初回限定でスリップケースつきだとのことですので、限定盤マニアはお見逃しなく。
ELOといえば、何となくスタジオ録音主体のバンド、あるいはライヴでのテープ使用/口パク疑惑などがあり、「ライヴに弱い」という根拠の無いイメージに塗りつぶされている気がする。
また、彼らの音楽で聴くべきは「オーロラの救世主」から「ディスカヴァリー」までの諸作であり、特に初期〜中期の作品には面白みがない、という、これも根拠の無いイメージがあるのではないか、と思う。
しかし、だ。
このDVDを見てロックファンは、目から鱗が落ちること確実! 彼らはそもそもライヴ前提でバンドを構想していた事がよくわかる。本作は1973年から76年、作品で言うと「第三世界の曙」〜「フェイス・ザ・ミュージック」までのライブ演奏を収めたものだが、素晴らしい演奏!! 単に上手いのではなく、ロックバンドとしての迫力やノリの良さ、あるいはプログレの持つ緊張感が凄いのだ。スタジオ音源ではただドタバタした音に聞こえたベブ・ベヴァンのワイルドなドラミングなど、惚れ惚れする。楽曲もシングルヒットした曲だけでなく、どれも演奏した際のダイナミズムに溢れていて、曲を知らなくても引き込まれる事間違いなし。
ストリングスだって、スタジオでダビングするだけならパーマネント・メンバーに引き入れる必要は無いのだ。一体感を持ってライヴを重ねていくためにこそ、彼らはバンドメンバーになっている。ミック・カミンスキーのヴァイオリンも、美形メルヴィン・ゲイルや、今でも現役でジョン・ウェットン等と共演しているヒュー・マクドウェルのチェロのリアルで骨太の弦の響きが堪らなく興奮させてくれる。
いやあ、よくぞ発売してくれました。 これは絶対に全てのロックファンが見るべき。ELOはライヴも魅力タップリです!
2006年版LIVE AT WEMBLEYは既発のものとは比較できないほど素晴らしい。
画質ももちろん良くなっているのだが、まず音を聴いて驚いてしまった。
当時、公演の際おこなわれていたテープを使用した弦などの音が、かなり抑えられていて
バンドの実際の演奏(一部、ボコーダーの音など不明な箇所はあるのだが・・・)を
クリアな音で聴くことができるのだ。
ライヴ映像が少ないバンドだけに、このリニュアルはファンとって喜ばしいことであると思う。
さらにオフィシャルプログラムも封入されているのだが、残念ながら今回もリージョン1である。
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