小熊秀雄の3つの詩集が一冊になった感じなのに、とてもコンパクトです。小熊の世界が概観できるオススメの一冊です。現実に苦しんでいる人なら、どこかで共感できる言葉に出会う一冊だと思います。「闇が暗ければ、星は光るんだ、君はその星の光りを見落としてはならない」・・・ああ、そうだよな!と、元気づけてくれる、はげましてくれる詩集です。
小熊秀雄(1901〜1940)は、小樽生まれの詩人・小説家です。
小樽にゆかりのある作家や芸術家を調べていたときに出会いました。
実際は小樽稲穂町で生まれた後で樺太へ移り幼少時代を過ごし、旭川で新聞記者で身を立てながら、詩をつくりはじめた人、とのこと。
童話集に収められた作品は、そのどれもが鈍い光沢を持った硝子玉のような、不思議な透明感を持っています。 そしてその透明感を音にしたのなら、「かなしみ」とか「せつなさ」とか「やりきれなさ」と言った言葉の語感に近い、からから、さらさら、としたものになるように思えます。
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真っ黒い夜の海の水面に映る、少し欠けた月。 2月の寒風が辺りの枯葉に小さな螺旋のダンスを踊らせている、誰も座っていないベンチ。 その上に置かれた誰かの忘れ物の手袋片方。
昨今音楽において「チルアウト」ミュージックなんて切り口で取り上げられることがあります。 クラブなどで踊り疲れたからだを休められるようなダウンテンポなエレクトロミュージックをはじめ、フォーキーな女性ヴォーカルなどまで、興奮に向かって振れすぎた心の針をもとに戻してやるための音楽をさす言葉です。
明治後期〜大正という彼の生きた時代は激動と混沌の時代でした。 小熊秀雄の童話集はある意味、当時の人々にとっての「チルアウト・フェアリーテール」だったのかもしれません。
そしてそれは21世紀という時代に漕ぎ出した私たちにも変わらず必要なものであります。
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