世界的ベストセラーになった『ファストフードが世界を食いつくす』の著者が、 今や70兆円にまで膨らんだ米国の地下経済の実態に迫ったのが本書。 ポルノ市場や不法移民など、私たちが普段耳にすることのない、 アメリカ経済の闇の部分が実に生々しく描かれています。 筆者は、自由主義の原則が、政府によって「恣意的に」適用される ことが、結果として地下経済を大きくする考えています。 道徳的に間違っているという理由だけで厳しく取り締まわれたため、 巨大な闇市場ができてしまったマリファナ。 不法移民による、巨大な闇の労働市場なくしてはもはや成立しない カリフォルニア州の農業などなど、その実態はきわめて酷い。 自由主義という理想が、一部の企業の方便として使われたために こうした悲劇が起きたと筆者は論じています。 自由主義という美名の下に行われている不正義を告発した本書。 市場万能主義が抱える矛盾について考えさせられる一冊です。
独自取材や、著者個人の推測はない、という内容です。 これは、本書に対する非難ではありません。
本書の内容は公開された資料であり、確実である、という意味です。 推測や憶測を抜きにした、統計上の事実が記述されています。 地下経済は、最低でも、これだけあるわけです。
ということは、 統計の対象となっていない地下経済は、もうすこしある、ということになります。
「読んで重くなる」 という書評がありますが、同感です。
「最低限でも、これだけある地下経済」 という認識に立って読むべき書籍です。
ジワジワときますが、もうひとつインパクトに欠けるので、星4ツとさせていただきました。
本書の冒頭は、2002年に発覚した東京電力の原発トラブル隠蔽事件であり、東京電力の企業体質を真正面から痛烈に批判している。発行が2002年であるため、当然であるが、2011年3月11日の東日本大震災とその後の原発事故のずっと前に書かている。本書に書かれている東京電力に対する批判の切り口は、3.11後にマスコミに現れた批判と殆ど変らない。この10年間、東京電力が批判を謙虚に受け止め、企業体質や企業文化の改善に努めていれば、史上最悪とも表現される原発事故は起こらなかったかもしれない、と感じてしまう。 本書では、現代日本で、大手を振って影響力を行使している大企業や政治家・官僚、そして米国に批判の矛先を向けている。 様々な批判がなされているが、警察官僚に対する批判の切り口は新鮮であった。1982年の「商法改正」、1985年施行の新風俗営業法、繰り返し改正される道路交通法により、警察の利権が拡大していったという視点は、興味深い。また、著者は、歌舞伎町に中国マフィアが跋扈するようになった背景として、暴力団対策法の施行により指定団体の構成員が取締の対象になる一方、中国マフィアは取締の対象外となったためであると分析しており、一考に値する。 最後になるが、著者は京都伏見のやくざの組長の息子として生まれ、グリコ森永事件で最重要参考人として「キツネ目の男」と疑われた人物である。(2012/5/4)
著者は71年生まれ、慶応大学経済学部卒業後、浜銀総合研究所に勤務中に、この本を執筆されたそうです。一般に、アングラ経済の数字を推計するのは、どの国でも非常に難しいとされますが、日本の暗部をできる限り禍根が残らない形で調査し、どのような数字をはじき出したのかに興味がありました。あまりどろどろした話はなく、極めて統計上の計算的なお話が多いです。ただし、知られざる日本の地下では、表に出ない形でどのような経済活動が行われているのかを知る上では、とても興味深い本でした。マニアックなテーマを突き詰めるパワーは感じ入りました。
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