気持ちとしては★5つなのですが、生理学や化学や医学の分野に素人なので、門外漢の「慎み」として★4つにとどめます。専門家の方々のコメントをお聞きしたいところですが、私としてはあくまで素人なりの感想として、レビューを投稿します。 内容は理化学研究所が主催した脳科学に関する連続講演をもとにしているようです。甘利俊一氏、伊藤正男氏、利根川進氏がそれぞれの立場から、脳科学のこれまでを振り返り、展望を語ります。 やはり印象深かったのが、小脳研究で著名な伊藤先生が担当された章。個人的にはパーセプトロンに対するミンスキーらの批判や、バックプロパゲーションについてもう少し立ち入ったコメントも欲しかったところですが、紙数(講演時間?)の制限もあったでしょう。それでも小脳のシステムについてザックリとした、きわめてクリアーな説明が読めます。 記憶に関する利根川先生の章も刺激的です。ただ、素人なりの感想を言わせていただければ、利根川先生の記憶論は実験方法の鮮やかさには強烈な印象を受けるものの、大きな新しい理論的枠組みを提示する内容ではないので、やや現場からの実況中継のようにも思えます。 甘利先生に関しては、オーガナイザーというお立場だからでしょうか、ご専門の数理的な理論そのものに深く立ち入ることなく、総括と展望に留まったところが、やや残念でした。 しかしこういうものを読むと、哲学者たちのコネクショニズム話を読むのが辛くなります。科学の強みを再確認しました。
ノーベル賞を受賞した「抗体の多様性」解説はもとより、利根川博士が おくった京都大学の学生時代や、留学時代など、人との関わりや 科学者としての生き方についての内容が印象的でした。 漠然と理系や研究を志望している学生に「科学者とは、研究者とは」 というものの面白さを教えてくれる本です。 特に留学時代のエピソードが面白い!!! 生物系の大学への進学が決まったとき,生物担当だった担任から お借りしたのがきっかけで,早3冊も購入しました。 一冊は自分用,もう一冊は,今私が担任をしているクラスの学級文庫に あります。
脳科学講義というタイトルで脳科学の知識を得るための本としては別の本が良いだろう。 以前からセレンディピティーに興味を持っていて、いつかはこの分野を研究対象にしてやろうと思って少しずつ本を読んでいるのだが、この本もそういう意味で楽しい。 自分の半生を綴った第一章、異分野の方たちとの対話である4章、5章などは脳科学でもなんでもない、まさに利根川進その人となりを表す格好の文章である。 利根川先生自身が本書の中で、自分がもう一度ノーベル賞級の研究を研究をするのは無理だと述べているが、90年代に始めたノックアウトマウスを使った記憶に関する長期増強と連想記憶に海馬が果たす役割の解明など、分子レベルから生理学、行動のレベルまで統一して説明できる枠組みを提示したことなどノーベル賞級の研究だと思う。 超一流とはこういうことかと三流にしかなれない私などはため息が出る....
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