一度目読むと重たさが心を支配する。しかし、もう一度読まずにはいられない。そして、読み終えた後に、人生について考えることを強くせまられる。
もちろん哲学書ではない。しかし、下降線を辿る生活を綴った本書こそ、2011年を生きる、42歳の心を捉えた。
前半戦を引っ張りすぎた男の一人として、それを美学と思い込もうとしていた男の一人として、「冬の旅」は、後半戦と向き合う覚悟を与えてくれた。
小説への敬意、自分の心への誠実さを感じさせる文章。 詩のような、音楽のような文章。
傑作である。
桜井鈴茂の「アレルヤ」を読了。珍しく、曽我部恵一の帯が目に付いた、帯買いでした。個人的には現代の寓話、若者の理想が見て取れるファンタジー小説でした。でも作者は私と同年代。都市に生きる浮遊感というか、現実感の喪失、正に「ヘリ」に立ち尽くした感覚が全編を覆っています。
サラリーマンにとっては、青春の理想像のような物語。収録作の「おれのユッキー」にしても同じ感覚で書かれている。両作とも女の子への思いで、物語が終わる。男の物語なんて所詮こんなところなのかも知れない。
文体のリズム感が素晴らしく、読み進めていくことや、物語の世界に入っていくことは簡単であるが、その世界観に共感できるかどうかは読み手の感覚に任せられている。作者は自由だ。読み手はその世界観を受け入れることが出来るかどいうかで、本作の評価は変わります。年齢や世代ではない「感覚」の壁が本作にはあります。
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