号泣しました。エンディングでは涙がとめどなくあふれました。2002年に見た100本以上の映画のうち最も熱い感動を与えてくれたのがこの作品です。 85年に西ベルリンを訪れた際、東へと通じる検問所わきにチャーリー博物館という小さな施設がありました。命を賭して東から西へと脱出した人々が使用した様々な道具が所狭しと展示されていました。こうした展示品を眺めているうちに、家族の絆を引き裂かれた多くのドイツ人たちの心中を想像して胸がおしつぶされる思いがし、目頭が熱くなったことを今でもよく憶えています。 この映画「トンネル」はまさにあの展示品の向こうにいた人々が一度は失いかけた家族との絆を命がけで取り戻そうとする決死行の物語です。先に西側へ渡ったハリーが東に残る妹を脱出させるため、目的を一にする同志たちとともに壁の下にトンネルを掘る。一筋縄ではいかないこの試みに、次から次へと厳しい困難が襲い掛かる…。 「極限状況でのロマンス」といった娯楽映画的要素を盛り込みながらも、達成しがたいひとつの目的に向けて仲間たちが緊張感あふれる事業を成し遂げていったという事実の重みが観る者に強く迫ってくる作品となっています。 壁の崩壊後にベルリンを再訪しましたが、かつては行き来がままならなかった東西間を地下鉄が自由に往来していて、あっという間に旧東側のアレクサンダー広場へと出ることができた時は随分と拍子抜けしたものです。しかしその何でもない往来が出来るほんの十数年前に、この映画のように重々しく哀しい物語が実在したのだということを忘れたくないものです。あの壁を風化させないためにも、この映画をひとりでも多くの人に見てもらいたいと思います。
よくできた作品。映像は美しく、ヨーロッパの町の感じがよく出ており、時代の雰囲気もなかなか見事です。また、何よりも音楽がすばらしい。脚本もよく練れているので、正統派のメロドラマが正面切って演じられるのですが、べたべたしないで最後まで楽しめます。主演女優のエリカ・マロジャーンは、古典的な顔立ちの美人。この時代設定の当時としてはかなり進んだ考え方であろう、自由な女の役どころですが、周りの男性が振り回されているのを承知しながら、やはり自分の感性に正直に、なおかつ自分なりの筋を通して生きていくその姿が、なんとも魅力的。この女性をめぐる三人の男、それぞれが個性のある役どころ、とくに、ヨアヒム・クロルがいい。大見得を切った、大メロドラマに近い感覚なので、今の感性からすれば、少々大時代がかかった感はありますが、ヨーロッパの感覚ですね、これは。登場人物のキャラクターが、デリケートな演出によって表現され、人間の複雑さ、なんとも知れない奥行きが描かれているので、こういったデリカシー、ハリウッド映画にはないですね。ですから、ドラマが少々大時代でも幼稚にはならないし、見ごたえがあります。これはやはりお勧めです。
すごくせつなく心にしんみりきました
このかたの過去の本”死亡推定時刻”はスピーディーに話も進みドラマ化になるらしくすごく楽しみにしているのですが 今回の作品もこれに負けじを取らないくらいの出来上がりだと思います
あまり内容を深くは言えませんが、有名画家の間接的な刺殺事件に隠れる心情には読んでても非常に辛かったけどこの愛情表現に心温まります
また、この担当弁護士もとても感じのいい弁護士で心ひかれました
裁判内容や、言葉の説明もすごく丁寧にかかれてあり、読んでてものすごく読みやすかったし作者の配慮に好感もてました
最後になるにつれて真実が浮き彫りになり手に汗をにぎるくらいラストが気になりました
本を閉じてもこの後がどうなったかがすごく気になり、”その後〜”というものをだしてほしいくらいです
”死亡推定時刻”も絶品ですがこれも同じくオススメです!!
放浪癖があったダミアことマリー・ルイーズ・ダミアンは、 15歳にして家を出る。娼婦達に囲まれて食うや食わずの 生活を続け、多感な時期を極限の状態で過ごす。 そんな中で培われた彼女の持つ独特の雰囲気は 絶望を越えた現実。そして、絶望こそ最後の光明。 という奇異な状態を表現しているように思われる。 キルケゴール「死に至る病」によると 「死に至る病」とは「絶望」のことである。 墓守という奇妙な名前を持つ彼自身数奇な人生を送ったのであるが、 ダミアの人生もまたそれを凌駕するものであったのかもしれない。 そんなことを考えると、 マレーズ、ユージェーヌ・ゴンダの作詞 レゾーが作曲した、1936年レコーディング 「Sombre Dimanche (暗い日曜日)」が、 自殺者が続出したため放送禁止になった事実も、 彼女の数奇な人生に耐え切れない人の存在を示唆させる 一事件といえるのかもしれない。 ダミアは単に暗いシャンソンを歌ったのではない。 より深い闇に生きるダミアにとっては、 これすら希望に満ちたものだったのだと 思わずにはいられないのだ。
暗い日曜日への日本人の理解度があまりされてないような気もしました。 私は台湾人の父と日本人の母を持つハーフですが、小さな頃から父の仕事の関係で白人と知り合う機会が他の人より多く、この映画のイロナという女性への愛し方も常識にとらわれがちな日本人より、より深く、感情移入ができました。イロナは二人の男性を同時に深く愛します。彼女の母性というか、広い愛情や情熱がとても素敵だと思います。 ぜひ日本の人にもこのような愛し方も知ってもらえればいいなと思いました。
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