原作が最近では「MOONLIGHT MILE」「FRONT MISSION」等でSFづいているが、元々「一平」等で骨太の人間ドラマを描いている太田垣康男で、作画は「アイシールド21」で確かな画力と表現力を魅せた村田雄介。
と、実はかなり豪華な顔合わせとなった今作、
実に小気味良い作品であった。
簡単に言うと、ソーラーカーに夢を燃やす大学生達の青春ストーリーだが、
主人公の翔太と潤子を軸に、しっかりとしたドラマで構成されている。
他のレビューにも有ったとおり、全2巻で9話と短いストーリーではあるが、それぞれの青春が過不足無く爽やかに描かれており、読後感も非常に良かった。
ただここまでのドラマを見せて貰ったので、翔太の入学後の話を潤子とのラブストーリーも含め、他の三人の仲間達との更なる展開を見てみたかったというのは、この作品を好きになった者達の共通の希望ではないだろうか。
まぁそれだけこの作品のドラマとキャラクターが非常に良く描かれていたからなのだが…
あと、実際の企画・連載開始は一年以上前で、3月の震災とは全く関係が無いのだが、あの震災の後にこういう作品の単行本が発売された事は非常に意義が有ると思ったのは私だけであろうか。
何にしろ、久し振りにいつか続編を読んでみたいと思った良作だった。
本作は、青年誌・少年誌問わず現在連載中の漫画作品の中で私がもっとも注目している作品のうちの一つです。
羊飼い編以前は激しい戦闘シーンはあるものの、戦争における人々の残酷さ、したたかさ、愚かしさ、美しさ、そして戦争そのもののやるせなさなど、むしろ内面描写に特化した感があります。自分の中で本作は、良い意味でオムニバスという形式を活かし、それぞれが一つの要素を突き詰めた作品群という印象でした。
しかし、本編はそれ以前のどの章とも違い、明らかに長編を意識したものとなっています。結果、ある意味縛りであった短編という枠から解放され、内面性を深く描きつつも、エンターテイメント性を兼ね備えた傑作へと昇華しました。
絶望的な戦況の中で覚醒する生存・闘争本能。追い込まれるほどに冴えを見せる羊飼いの頭脳。恐怖、絶望、歓喜、悲哀、目まぐるしく変化する状況に振り回される各々の感情。精緻かつ迫力ある筆致で描かれる戦闘シーン。複雑に絡んだ因縁の糸、深まる「謎」。
濃厚な「人間描写」と見る者を魅了する戦闘シーンの調和。まさに一流のエンターテイメント作品です。また、戦争における愉悦・興奮を描きつつも、あくまでもこれまで同様その凄惨さ・不条理さという本質が前提となっており、近年においては稀な「考えさせられる作品」となっています。テーマがテーマですので読者を選ぶ作品かもしれませんが、それでも今後より多くの人に読まれ、評価されることを願っています。
太田垣康男原作・小学館ビッグコミックスペリオール連載 『MOONLIGHT MILE』1stシーズンのWOWOWアニメ第7,8話を収録したDVD4巻です。 来るべき未来と宇宙開発の世界を緻密かつリアルに具現化し、 その夢に賭けた2人の男の情熱を真っ直ぐ捉えた重厚な人間ドラマです。 ただし、露骨で18禁なアダルトシーンもあるのでご注意を。 (総合7/10点)
MISSION:07「再会」★★★★☆8/10点 地上でくすぶっていたロストマンもついに宇宙へ上がります。かつてのザイルパートナーの 二人の始まりの物語に合わせた、世代と時間を越えた「再会」の物語が感動的です。 地上落下回避の緊張が迫るISAスペースシャトル「オデッセイ」のCG描写と球体として描かれる地球の 雄大さも相まって宇宙に賭ける者達の序章にわくわくさせられます。
MISSION:08「軌道からの帰還」★★★☆☆6/10点 カプセルロケット・ドネルケバブ号の射出事故が発生。強行減圧での作業の中、 生死を賭けた男達の熱いドラマが見物です。家族のために最後まで諦めない執念の生き様に こちらも緊張させられます。ただ、宇宙に上がってもあいかわらず女性陣のアピール具合が 取って付けたようで、違和感があるのが残念です。
太田垣康男原作・小学館ビッグコミックスペリオール連載
『MOONLIGHT MILE』1stシーズンのWOWOWスクランブルアニメ第を収録したDVDです。
来るべき未来と宇宙開発の世界を緻密かつリアルに具現化し、
その夢に賭けた2人の男の情熱を真っ直ぐ捉えた重厚な人間ドラマです。
ただし、露骨で18禁なアダルトシーンもあるのでご注意を。
(総合5.5/10点)
MISSION:03「ラストスイング」★★★★☆7/10点
最終選考に合格し、アメリカで宇宙用ロボットアームの訓練操縦者として着実に力をつける悟郎。
今回、宇宙空間作業中に事故に巻き込まれた同棲中のモエラの兄、クリスの救出劇が見物です。
ここでも悟郎の圧倒的な集中力に加え、その破天荒な救出プランが唸ります。
いよいよ本作の見所の一つでもある、くせの無い滑らかな3DCGのメカ描写が光り、
ベースボールを比喩にした二人の男の熱い友情の姿が、晴れやかな気持ちにさせられます。
ただ、お話の展開がやや速すぎるのが残念ですね。2話に分ければもっと入念な描写が出来たかもしれません。
MISSION:04「砂漠の誓い」★★☆☆☆4/10点
砂漠を舞台にしたロストマンとある親子との絆の物語です。
ISA転属直前のラストミッションで撃墜された海軍パイロットのロストマンと
宗教概念を強めた二人の親子の生き様が錯綜します。
物語の内部事情が若干わかりにくく、急展開の連続のため観ているこちらは
やや置いてきぼりにされた印象が強いのが残念です。
父、吾郎に逆らってまでも、テロリストたちと行動を共にするムーンチャイルドの歩。その歩に宇宙ステーションから目撃した地上の核戦争、そしてロストマンをめぐる真実を語るファトマ。
ようやく、吾郎たちとテロリストたちの戦いの背景やその意味が理解できるようになってきた。
核戦争後の地上の悲惨な状況、そして月が重要な資源の供給源となり、それをめぐっての権力抗争。世界統一、人類統一の象徴でもあった月に現実の階級闘争が持ち込まれる。
吾郎たちが月に到達してからのこのコミックは、宇宙への夢というロマンティックな話というよりは、月面での現実の厳しい闘争、政治シュミレーションといった様相を表している。
ロストマンや吾郎が求めていたものとは全く違うし、自分が最初にこのコミックに惹かれた理由も薄れてきてしまったが、隠されていたより深いテーマが表面に現れてきたような気がする。
もはや単なるSF宇宙コミックではないな。現代の黙示録になるような話だ。
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