にっかつロマンポルノ全盛期に、同社が1年に数度作っていた「一般向け」映画のひとつ。 記憶をたよりに「エロい映画だった」ような思い出をブログに書いていたような方もいますが、主人公が赤線地帯の娘であるゆえに、 この時代ではまだ話題になった「女優のヌード披露」シーンがあるだけで、いかにもおとなしい作品です。
むしろテイストは、ほんのひと昔前の日活青春路線に近いものとも言えるでしょう。 主演の三浦リカも、この物語では春をひさいでいる娘とは思えないポジティヴさを振りまいています。 そのあたりは、もっと醒めた女であった原作を逸脱していますが、これは観客のニーズを反映してのことには違いありません。 でも人物の類型化はロマンポルノに引きずられる形とはいえ、それらの傑作扱いされる作品群より退いているのはたしかでしょう。 ロマンポルノをも撮った武田一成作品であるのだから、あるいは一般向けという免罪符ぬきでも真に迫った男女のありようを撮ってほしかった。 そのあたりは残念です。
三浦リカはまだ初々しい魅力を放っているほか、上映当時を匂わせる数々の俳優たちの登場には胸を躍らされます。 また、売春窟という今では地獄のようにしか語られない場に人間味をおおいに加味したことは、やはり今とあっては慧眼と見られるべきでしょう。 一見の価値はあります。
独特な脚色で古来の怪談を楽しませてくれるTVシリーズの 第二弾。第一弾の二作品とは趣が異なり、昔話風の怪談が 語られる。 「耳無し芳一」では岸谷五朗が熱演。原作にはない裏設定の部分で 若干無理があるが、それでもきっちり消化しきる脚色は見事。 唯一の難点は最後のオチが最初に読めてしまう所。 「姥捨山」のユースケ・サンタマリアは思ったよりもハマり役だが、 驚く時の「あーっ!」は何度聞いてもその後某CMソングを歌い出し そうでちょっと食傷気味。どちらかと言えば苦笑を誘うような 雰囲気で話が進んでいくが、こちらはオチが秀逸。 ただ、どちらの作品もこのシリーズ特有の「せつなさ」があり、 時代劇ファンならずとも必見。
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